13 莫高窟など 四日目(初4)
朝早く起きて近くの清真食堂に行った。子どものような女性が掃除していた。すぐできるものを注文した。5元の麺におまけのナンがついてきた。 戻るとタクシーがやって来た。そのまま乗って敦煌を目指す。途中で一人客を乗せ、一度料金徴収所を避け田舎道を迂回して、後高速路に入った。これまた一本道。 莫高窟は当然ながら岩山を背にしている。100元の入場料を払って中に入る。どこかの団体に付いて行けとの指示。一人だけではどこの窟も鍵がかかっていて見ることができない。1963年頃に修復したと言う莫高窟だった。2ヶ月ほど前にCCTV1チャンネルで『大敦煌』を見ていた。1000年間の敦煌にまつわる話が、宋の時代、清末、民国時代の三部作として出来上がっていた。 五つほどの窟を見終わるとそれでおしまいらしい。小団体と分かれて一人柵の外枠に沿って歩いてみた。先ほど見た096窟の大仏殿が少し離れてみると全体像としてよく分かる。観光写真などでよく見る7層の赤い外壁を自分の目で確かめた。隣に博物館があって、今の研究員たちがそっくりに模写した幾つかの窟も確認できる。 書籍売り場で、『大敦煌』で紹介されていた敦煌を諸々の略奪者から守ってきた土匪たちにまつわる物語を探したがなかった。 来てよかったのは間違いない。しかし、100元も取ったこと、取られたことが悔しくて、このタクシーとは敦煌のバスセンターで別れることにした。
武田敦監督、西田敏行、渡哲也、田村高弘、佐藤某ら出演の『敦煌』撮影の際に作られたオープンセットが郊外にある。20年前のことだ。そこへのバスは通ってないと言う。別れた運転手が要求したのと同じ往復80元位らしい。車を停めると女性運転手だった。働き出して3年と言う。またまたまっすぐの道をひた走ると程なく着いた。入場料は30元。 よく出来ていると思った。映画やテレビの中でどこをどう映したのか細かには分からない。しかし、雰囲気を想像させるだけの内容がある。 上海で仕事していると言う若い日本人に会った。こんな所に来る日本人は稀だろう。二度と会うこともなかろうが、奇跡が起きたらいいと言って別れた。 寺を一人の老人が案内してくれた。木をくべていかにも寺の「坊」守である。灯篭の上部は既に風化して発泡スチロールがもろ見えになっている。私がコンコンと叩いているのを見て「坊」守氏は笑った。韓国人かの問いに日本人と応えたら何故か拝み出した。少し大仰な振る舞いだが、「坊」守の仕事は十分にこなしている。 テレビ『大敦煌』で見た莫高窟内の仕事場がここにセットされている。撮影されていた暗い窟のセットには、若い従業員が案内してくれた。冬場で人の極端に少ないのが幸いして私は得をしている。彼らの一所懸命さに感心した。案内人お勧めの動物館には、この地の動物たちや駱駝の剥製まであった。目の前に立つ駱駝は特に大きく見えた。
戻りは敦煌市博物館で降りた。この日の参観料は何故か無料とか。ちゃちだが、敦煌の歴史が分かる。班超の役割、万里の長城の点々と存在する敦煌内の何十もの遺跡、敦煌を入れ替わり支配した多くの征服者たち、これらを改めて見ることが出来た。シルクロードがまた一層頭に入った感じだ。 4時にはそこを出された。ぶらつきながら屋台の麺を食べ、見つけたインタネットカフェで小一時間、そして朝の真善食堂に。ナイチャを頼んだら5元と言う。はじめてどんなものか分からない。幾らでもよかった。するとヤカンいっぱい出て来た。熱くて美味しい。でも全部どころか半分でも無理。部屋に戻って入れ物を取りに帰った。 ホテルの部屋の鍵が換わっていた。新しくなっている。 二日目のホテルは馴染んだ分、使い勝手がよくなる。足洗いと顔洗い用の二つのボールが用意されている部屋は初めての経験だ。ポットの熱いお湯で体を拭くこともした。寝袋を出しそれに入って寝た。いい感じだ。
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