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作品名:春節前後を行く《旅は遥かなる記憶を蘇らせる》。 作者:あるが  まま

第10回   10
10 ハミ 春節二日目(初2)
 
 同じ部屋に、二人の若者がまだ軽いいびきをかいている。
 私を乗せてタクラマガン砂漠の東側の地に連れて行き、また夜の食事場所まで誘ってくれたアルバイトンの青年たちである。疲れているのか、仕事にありついて安心しているのか。
 家の主人が暖炉に石炭をくべに何度かやって来た。これまたルンペンストーブを使っていた札幌の学生時代を懐かしく思い出させる石炭の匂いが漂ってくる。
 私は、早く起き出し支度を急ぐ。ここのご夫婦や二人の青年の名前を書いてもらった。彼らウイグル人にとって漢字で書くのは難しいらしい。漢字は私が書いた。
 ともあれ、いい人たちである。旅行社を経営する31歳氏は苦学の末に今の位置にたどり着けたのだと思うと、彼のやり方を無下に否定できない。彼がいるからこそ、青年のアルバイトも、農民家を営むのも可能になっていることは事実である。それでも、私が払った内のどれだけが彼らの手に入るのか、およそ想像ができる。
 その安さの仕事であるにも拘らず、客である私によくしてくれる。有難い限りだ。
 トルファン市内まで戻るのは時間的に危ないので、途中で乗ることになった。31歳氏は最後の最後まで2000元で敦煌往復できると誘っていた。私にはそれらを出すお金はもはやない。自分でバスに乗っていく方が楽しみも多いし、経済的でもある。3月以後の色々な旅の計画を考えれば、少しでも倹約しなければならないのだ。
 バス代は何故か私が見た値段より10元高かった。こういう所はどうしても納得できない。が黙っていた。
 北側に天山山脈をずっと見続けて6時間。そしてハミに着いた。新疆の東の端になる。すぐ近くは甘粛省だ。長距離バスセンターまで行って、次のバスに乗り換えたいと思ったら、春節前後三日間は休みになるらしい。新疆ではどこでも春節は関係ないと言うことであった。しかしハミでは同じ新疆でも春節がもろに影響しているのだ。仕方ない。列車の駅までタクシーに乗った。翌朝7時過ぎのしかなく、駅構内のホテルに泊ることになった。


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