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作品名:『父の里の牛のように・「福岡拘置所3泊4日の旅」・丑の年の素敵な研修』 作者:あるが  まま

第8回   8 10月9日その3
<8> 10月9日その3

 昼食は12時。決まった順序。つけものとレバーや玉ねぎ・人参・キャベツ・ニンニクの赤みそ煮とキュウリ・人参・キャベツの酢の物、それにおからである。三食つづきの赤みそには、さすがに参る。でも、おかずだけはすべて無理して食べる。

 昼食がすむと、またヒマになる。窓の外を見る。貸出しを示す表札がいつもの通り目にとびこんでくる。書様式綴・六法全書はさすが拘置所だ。針・爪切・剃刀・ハサミ・ホッチキスや体温計もわかる。鑑定とかなんとかあるが何だろうか。居場所の変更を示すTV鑑賞・入浴と細かい。出廷中というのがもっとも印象的だ。ヒマだから何回も何回もつぶやいているうちに覚えてしまいそうだ。

 その間にもあいかわらず出入りが多い。たくさんの人が房の前を往きかった。時折、半袖シャツから文身がこれ見よがしに見える。

 「なんしょうとかキサン、かべになんかかっとろうが。」「人が見ておろうとおるまいとチャンとやれ。」「言うとろうがキサン、チャンと聞いとれ。」などのことばが、遠くのほうから聞こえてくる。誰かが叱られているのだ。「点検の時、座布団はとんなさい、座布団は。」などの言い方は穏やかなものだ。「オン、ナンカァおめえ。」なんて言われると他人事でもイヤになってしまう。


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