<7> 9時頃か「横になってもいいぞ。」と担当さん。「待てよ、お前は労役だな。」「ちょっと待て。」と電話で指示を仰いでいる風。窓から見える廊下の壁に置かれた黒板には3舎1階の人員が区分けしてある。被告(19人)被疑(1人)確定(4人)経理夫(1人)の各項目はペンキ書きだが、「労役」(2人)の欄はチョーク書きだ。ということは”労役”が収容される機会は少なく、さすがの看守さんらも熱知していないということだろう。結局、労役の者だけは、座ったままの姿勢という指示が出た。「だったらすみません。本は何とかなりませんか。」「雑役サンがダメだと言ったんだろう。雑役サンがダメならダメよ。」の返事。まさか主導権が向こうにあるわけでもあるまい。と思ったが、沈黙。 自分の預けている本は渡してもらえないのか(つまり所内言葉で言うと、領地物を仮下げ・房下げできないか)と別の看守さんが通りかかったとき尋ねた。「午後からだ」という。それまで仕方がない。「二人の軍師」をパラパラ繰りながら難しい漢字を指で練習しながら時間をつぶす。鬱・気儘・伽羅沙・羅… 10時頃、再び医務室行き。例によって例の行進。大声に見舞われながら4階には別の医師。内科だ。胸をトントン。「公務員だったのか。公務員だったら一日にたくさん貰っていただろう。」「ハイ。」「大体どこだったのか。」「できたら勘弁して下さい。」「ウム。」そのとき一緒になった人は、何でも肝硬変で入院中脱け出て酒を飲みそこで事件でも起こしたのだろう。医者にエラく叱られていた。結局病舎行きと決まったようだ。
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