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作品名:『父の里の牛のように・「福岡拘置所3泊4日の旅」・丑の年の素敵な研修』 作者:あるが  まま

第6回   6 10月9日のこと
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    10月9日のこと

 朝、白々と空が明るくなっていた。することもない。たっぷり寝て、日頃の睡眠不足も癒された。「心得」でもと横になったまま読んでいたら、コツコツと窓をたたく音がする。何事ならんと見上げると「読んではいけない。」との手のしぐさ。小さく「ハイ。」と応えて目をつぶる。

 「カッコウカッコウ エッチンベコ はいてー」のメロディー。やっと7時20分だ。急いで起きて布団をたたみ洗顔、掃除。

 7時30分またおらび声がこだましてくる。朝点検だ。今度は「番号。」の問いに「702番。」と正しく応じる。そして食器カゴを用意して待つ。ほどなく例の大ジョウゴ。「まだ入ってます。」「熱いのはいらんのか。」と通りすぎた。それもそうだと思いつつ流しに捨てに行ってたら、戻ってきてジャブジャブ。飲ませんとかならないのはいい。

 納豆に赤だし味噌汁につけもの。メシは勿論麦まじり。5対5か4対6か程。増えも減りもせず。残したものはすべて飯椀に。それのみが引かれていって後はすべて自前で洗うことになっている。

 昨夜のうちに読んでしまったから、交換できないかと雑役さん(正式には経理夫というのかもしれないが)に聞く。「できるわけがない。」とにべもない。
 そのうちに(今度は)購入物品の注文取りに再び雑役さん。嬉しくなってボールペン(60円)と便筆(140円)を注文。「702番 竹尾」と署名。「名前も書けて言いよろうが、言いたいことだけ言うて。することせな。」と看守さんに似るのか言葉がきつい。判らずに質問をした。それだけのはずだ。僅かに本の交換のお願いをしたことが「言いたいこと」になるようだ。恐ろしい所だ。
 「すみません。」と名も書き加える。


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