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作品名:『父の里の牛のように・「福岡拘置所3泊4日の旅」・丑の年の素敵な研修』 作者:あるが  まま

第11回   11 10gatu10hi
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   10月10日 体育の日のこと
 10日。祭日。体育の日。休日のラジオは朝10時からだ。Sport’s Dayなどと英語で述べている。
 君が代の演奏が聞こえてきた。運動会なのだろう。途中で炭鉱節まで登場。学校なんかでなく地域の催しだ。
 それもいつしか忘れていた。山手樹一郎を読みあきると、文をひたすら書き続ける。ラジオ体操が初めて自分のスピーカーを流れてきた。首まわし・首たたき・肩たたき・肩の上げ下げ・胸そらし・前かがみ後そらし・足の上げ下げ・自転車こぎ・背面そらし・腕立て伏せ・深呼吸と続く。
 足の上げ下げのとき、畳にドスンドスンとする音が聞こえてくる。微妙にタイミングがずれるのもわかる。所内で語り合うこともない者同士、このときは仲間意識めいたものを感じる。
 昼食は酢豚。角切りのブタにキュウリ、玉ねぎ、人参がある。あとはつけもの。
 そしておやつに、バナナ二本。二舎だからか祭日だからか。いつもだと子どもにやって自分で食べることはないのだが、ここでは二本ともおいしく食べてしまった。
 ほんとに静かさの中で時はゆっくりとすぎていく。何の変化もない。
 夕食は、焼き魚に大根おろしとつけもの。そして夜を迎える。眠れない。明日の出所のことを考える。8時半に納金してもらうことになっている。頼んだ人が病気になったり、ケガしたらどうなるのかこちらから連絡はできないし、向こうからも難しい。悪い予感が次々に襲い舎監どころか同窓会の打合せ、仲人の件まで失敗したことを考えたりした。
 でも、そんなことにはなるまい。また楽天的に考えながら夜の過ぎるのをひたすら待つ。樹一郎はやっと読了した。文章もしっかり書いた。原稿用紙でいえば20枚は早くもすぎている。
 21時。でも眠れない。「心得」などを何度も読んでは暗記する。何度も読むうちに新しい発見もするから不思議だ。


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