20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:日々、淡々と 作者:

第1回   1
白を基調とした殺風景な部屋。

窓際にベッドがありカーテンは優しく揺れている。
ベッドの横にあるパソコンに向かい合って座る、男とも女とも見える人物。

部屋に響くキーを叩く音。


その人物の家は山と海に囲まれていて、なだらか丘を人が行き来する。


この町には一週間程前に引っ越してきた。


手を伸ばし煙草をとる。

その人物は痩せこけているが、綺麗な顔をしていた。


この街には自分の人生を終りにする為にきた。



死に場所は綺麗な所がいい。
それがこの人物の唯一の夢。


今までなにも望む事も無く生きてきた。

いつこの世から旅立つか。
どんな方法で終わらせるか。
それだけは決めて。


腕にはためらい傷

なんてものは無い。


それは今ある苦痛から逃げ出してるだけ。

でも生きたいと必死で闘ってる証。


生きたいとは思えない。

何かあった訳じゃなくて。
自然とそう思う。


いらない
必要とされない人物。


消えていくのが一番だろう。


必要とされる人物になる為の努力。

それは社会への努力?
他人への努力?
理解出来ない。

他人より裕福になって自分以下を見下す。
そんな人間になる為の努力はしたくない。


いつしか自分自身も汚れてしまった。

それが社会に順応するという事。


汚い水を飲み過ぎた人間は、汚い目を、汚い光が包んでいる。

そう見えるんだ。





死ぬ寸前になれば生きたいと思えるのか。

何か感じる事は出来るんだろうか。



この町にきてから必ず行く所ができた。
いつも決まって日が傾く頃にその場所に行く。

丘を上って目の前に広がる草花。


普段は緑が生き生きとしているが、この時間になると一面黄金に輝く。


風が優しくなでると波が起こる。
吸い込まれるようにその中に入って、時が来るのを待つ。


草花が擦れる音がする。

必ず夜はきて、輝きは失われる。


草花が擦れる音がする

満ちて今にも落ちてきそうな月が浮かんで。


草花が白と黒になった頃に目をとじた。









真に満たされる時間は本当に少ない。




その為に生きれますか?


次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 665