ベッドルームだった。 天蓋のついた四柱式ベッドが重い垂れ幕で覆われている。 人が、四人は寝れそうな大きなベッドだった。 その後ろに広い窓がある。 赤い古びたカーテンを両手で一気に開いた。 下に見えたのは、よく整えられた庭園と、古く豪奢な作りの屋敷。 ……ここにわたしは、住んでいたの……。 ……それとも招かれたのか……。 部屋の中央に戻ると、飾り机の上に小さな写真立てがあった。 そこには自分の顔と、若い男の人が映っていた。 自分はその人と手を組んで、笑っていた。 ベッドの前に駆け寄って、何か手がかりがないか探してみる。 服が一着、たたまれて置いてあった。 ガウンを脱ぎ捨て、赤いワンピースを身につける。下着もベッドの上に置いてあった。 サイズはちょうどよかった。 机に立てかけてある黒いブーツも履いた。 そのとき、机にメモ用紙が置いてあるのに気づいた。 ーー今日、君の夢が叶うよ、イヴ。 それと同じ文章を下に書いてみる。 メモに書かれた字とは、につかない、いびつな文字だった。 ……これは、わたしの字じゃない……。 机の木製の引き出しを順々に開いていく。 文房具、書類、そして、一番下の引き出しには、銃があった。 ガラスのふたが厳重にかぶせられ、鍵がかけてある。 ……これは、軽機関銃……、なぜ、こんなものがここに……。 一瞬、原因不明の目眩がして、その場にうずくまった。 疲れていた。 いろんな物がわからなくて、くたびれた。 唯一理解できたのが、「軽機関銃」一つだけとは、自分はいったいどんな人生を送ってきたのか不安でしょうがなくなる。 調子よく刻む時計の音を聞きながら、いつしか自分が立っているのか、座っているのか、わからなくなり、なにがどうなったかわからない最初の無意識状態にズンズン墜ちていった。
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