コツン、クルッ、パタパタ 「元気に動きまわっているわね、あなた」わたし達の大切な宝ですもの……いつまでも
「沙和、沙和」わたしは沙和を呼ぶ。 「……お、かあさん?」沙和の声が聞こえた。 「ふふ、びっくりした? 」 「ここは一体どこ?なんかザーザーって聞こえるけど……何でお母さんの声が聞こえるの! これは何なの」 沙和が慌てるのも無理は無い。今までとはまったく違った世界、実態のわからない世界に飛んだのだから…… 「沙和、今あなたはわたしのおなかの中にいるのよ、まだ生まれていない赤ちゃんなのよ」わたしは心の中で話しかける。 「……」 「びっくりしちゃったでしょ、今までも恐い思いや切ない思いいっぱいしてきて、今度はわたしのおなかの中なんだから……ごめんね」 「おかあさんだったの?今までの夢……」 「驚いた? 」 「驚いたって、ちょっと待ってよ!訳がわかんない、超能力じゃない!」 「ハハ、まさか!だからホントにごめん」わたしもどう答えたらいいのか、よくわからない。 「あのね、あえて言うなら、わたしの気持ち、かな……わたしが沙和に見せておきたかった事、伝えたかった事、話してもわからないけど、見れば心に残るような、そんなわたしの思いなの」 「でも……」沙和は半信半疑だろう。 「どっちにしたってほら、これも夢なんだから、ね」 「そうか、そうだね、まぁいいか」 沙和は夢の世界で、多くの経験をした。それらのひとつひとつが彼女に刷り込まれていった。それがこれからの人生にどう影響を与えるか、それは、その時々において沙和が考え、判断することだろう。親の願いはただひとつ、子供の幸せだ。ただただ愛しく、大切な命…… 「ねえ、おかあさん、おとうさんは? 」 「ここに居るわよ、おとうさんわたしのおなかに手を当てて、嬉しそうにしてる」 「あ、もしかしたらこれかなぁ……なんか光がうっすら射してて、あったかい」 「きっとそうよ、まだ名前もないから、あかちゃんっていいながら…よくこうしているのよ」 「そうなんだ、おとうさん結構厳しいから、なんか、なんか……」 「あなたのおとうさんだもの」
「あんまり帰ってこないでごめんね」 「たまにはね……たまに元気な顔見せてくれれば充分よ」
「おかあさん」沙和が言う。 「なぁに、沙和」
エピローグ 沙和の母は洗濯物を干しに、庭に出た。 片隅に赤い彼岸花が少し咲き始めていた。 なぜか胸がいっぱいになり、空をみあげる……そこに懐かしい両親の面影を見たような気がした。
Fin.
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