Stage 3
見た目は草食系っぽいけど、それはそれで悪くない。話していると雰囲気が伝わる。 「すっごくいい感じ」 沙和は思った。合コンから始まる恋って案外アリなのかも・・・ その時スイッチが入った。ちょ、ちょっとお願い! 今夜はいい夢みさせて!!
現実のままのOL もちろん日本 もちろん現代
「ねえ沙和、今夜ちょっと飲まない? 」 「ああ、おはよう美香。そうね、久しぶりに飲むか」朝っぱらからわたし達何言ってんだか・・・ 島村美香。所属の課は違うが、同期入社だ。現実の世界では程々の付き合いだが、ここでは仲がいい。そういえばデスクの配置も、社員の顔ぶれも少し違っている。おまけにわたしには、彼氏がいることになっている。ちょっと複雑な気分。 夕方、残業もなく「ラッキー! 」と言いながら二人で会社を出た。わたし達は隠れ家的なダイニングバーに腰を落ち着けた。このあたりは学生も多く、居酒屋は少々うるさい。バラード系のR&Bが、抑えられたボリュームで流れる。女友達の二人組。話題はやっぱり、的なものから始まる。 「ちょっと噂になってるよ、美香。最近販売企画の倉沢さんとラブラブだって。付き合ってんの?」わたしはひやかし半分に聞いた。 「違う。仲良くしてるし、好きだけど、っていうかだから困ってる」美香の言葉はため息まじりだ。 「友達以上、恋人未満かぁ・・・」沙和は、なる程なと思った。 美香の大学時代のサークル仲間、中田修也とも同じような距離間、友達以上恋人未満で続いている。一緒にいると居心地が良くて、離れられないそうだ。 運ばれてきたサーモンのマリネとクラッカー、チーズの盛り合わせ。本気でおなかがすいてきた。 「キープが二人ってみんな思うよね・・・」頬杖を付きながら、チーズをつまむ美香。 自分から思い切って飛び込む勇気が無いのか、待っているのか、そこまでの気持ちは無いのか・・・ 「倉沢君の事は、どの程度に思ってるわけ? 」 「 修也とお・ん・な・じ」 「このままズルズルいったら、結局みんなパーになって、三人共傷付くよ」 何となく説教くさくなる。 キッシュを追加した。シャンディー・ガフを三杯、最後の一杯は、話題が変わった。
美香と別れアパートに一人帰り、出張中の彼氏とのコールタイム。狭いけれど、安っぽくはないわたしの部屋。夢の中の部屋はカーテンの色が違う。そしてお決まりのように、マグカップが二つ。さすがにミッキーとミニーという年ではない。 「そうだけど、何で? 」 「うん、今の時代安定志向だけど、別に条件を気にしてるってこどじゃないなって思って」 「 サラリーマンだって今は安泰って時代でもないわ」 「もちろん。会社に全てを託せるなんて、誰も思ってないよ。どっちが好きかって頭で考えても、結局決められないんだろうな。オレなんか、沙和のどこが好きって聞かれても、わかんないもん」 「え・・・」 「ただ好き、としか答えられない。沙和を離したくないよ」 わたしは胸がキュンとなった。 「どっちかが転勤にでもならない限り、無理だったりして」笑いながら彼が言った。 でもわたしはさっきの言葉にぼーっとなって、美香のことはすっかり頭から飛んでいた。
ところが・・・ 本当に転勤の内示がでた。但し一年間の期限付きで。 転勤先はタイのバンコクだそうだ。新しく設立した工場で、従業員の研修をおこなう。コンプライアンス重視の観点を初めから身に着けてもらう、徹底した研修を行うらしい。そのため数人の社員が派遣されることになった。そしてその辞令を受ける事になったのは ー 美香だった。 いよいよ出発という一週間前、二人はアジアンリゾート風の店で食事をした。籐のイスはゆったりとしていて、日本人の口に合わせた料理がおいしいと評判の店だ。 「さぁ、話しなさい。友達以上から恋人になったいきさつを。もうひとりはどうなったのかを」後の質問はちょっと意地悪かも・・・ わたしは美香の事だから、てっきり煮え切らないまま、「とりあえず一年だし」とか言って、そのまま出発するものだと思っていた。 ちょっと照れくさそうに美香が話し始めた。 「どっちがね、好きかって考えても、どっちも好きだし大切だったの。でも、失ったらって思ったら耐えられなかった」 美香が飛び込んだのは、倉沢君の胸の中だった。 少女マンガなら、きっと中田君だろう。ずっとそばにいてくれた人の大切さに、改めて気付いた・・・と、こうなりがち。 「倉沢君ね、遠恋だけどちゃんと帰って来いって言ってくれたわ」 「中田君には?」そこは避けちゃだめだしね。 「ちゃんと話したよ。わたしね、学生生活がすごく楽しかったのね。だからその気持ちを全部修也に投影してたのかな。修也も同じかも知れない。話してて、ちょっと思った」 ノスタルジーか・・・その感じ、わたしにも何となくわかるな・・・店の照明が少しだけ青みを帯びていることに今頃気付く。わたし、夢の中だというのに、間違いなく彼氏に恋してた。切ないな。出張が長引き、電話だけの恋だったのに・・・
目が覚めたら沙和はすぐに気付く。携帯に未読メールが一件。合コンから始まる恋も確かにある。
To be continued
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