20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:SAWA 作者:KAORI

第3回   それが
 Stage 3

 見た目は草食系っぽいけど、それはそれで悪くない。話していると雰囲気が伝わる。
 「すっごくいい感じ」
 沙和は思った。合コンから始まる恋って案外アリなのかも・・・
 その時スイッチが入った。ちょ、ちょっとお願い! 今夜はいい夢みさせて!!


 現実のままのOL もちろん日本 もちろん現代


 「ねえ沙和、今夜ちょっと飲まない? 」 「ああ、おはよう美香。そうね、久しぶりに飲むか」朝っぱらからわたし達何言ってんだか・・・
 島村美香。所属の課は違うが、同期入社だ。現実の世界では程々の付き合いだが、ここでは仲がいい。そういえばデスクの配置も、社員の顔ぶれも少し違っている。おまけにわたしには、彼氏がいることになっている。ちょっと複雑な気分。
 夕方、残業もなく「ラッキー! 」と言いながら二人で会社を出た。わたし達は隠れ家的なダイニングバーに腰を落ち着けた。このあたりは学生も多く、居酒屋は少々うるさい。バラード系のR&Bが、抑えられたボリュームで流れる。女友達の二人組。話題はやっぱり、的なものから始まる。
 「ちょっと噂になってるよ、美香。最近販売企画の倉沢さんとラブラブだって。付き合ってんの?」わたしはひやかし半分に聞いた。
 「違う。仲良くしてるし、好きだけど、っていうかだから困ってる」美香の言葉はため息まじりだ。
 「友達以上、恋人未満かぁ・・・」沙和は、なる程なと思った。
 美香の大学時代のサークル仲間、中田修也とも同じような距離間、友達以上恋人未満で続いている。一緒にいると居心地が良くて、離れられないそうだ。
 運ばれてきたサーモンのマリネとクラッカー、チーズの盛り合わせ。本気でおなかがすいてきた。
 「キープが二人ってみんな思うよね・・・」頬杖を付きながら、チーズをつまむ美香。
 自分から思い切って飛び込む勇気が無いのか、待っているのか、そこまでの気持ちは無いのか・・・
「倉沢君の事は、どの程度に思ってるわけ? 」
 「 修也とお・ん・な・じ」
 「このままズルズルいったら、結局みんなパーになって、三人共傷付くよ」
 何となく説教くさくなる。
 キッシュを追加した。シャンディー・ガフを三杯、最後の一杯は、話題が変わった。


 美香と別れアパートに一人帰り、出張中の彼氏とのコールタイム。狭いけれど、安っぽくはないわたしの部屋。夢の中の部屋はカーテンの色が違う。そしてお決まりのように、マグカップが二つ。さすがにミッキーとミニーという年ではない。
 「そうだけど、何で? 」
 「うん、今の時代安定志向だけど、別に条件を気にしてるってこどじゃないなって思って」
 「 サラリーマンだって今は安泰って時代でもないわ」
 「もちろん。会社に全てを託せるなんて、誰も思ってないよ。どっちが好きかって頭で考えても、結局決められないんだろうな。オレなんか、沙和のどこが好きって聞かれても、わかんないもん」
 「え・・・」
 「ただ好き、としか答えられない。沙和を離したくないよ」
 わたしは胸がキュンとなった。
 「どっちかが転勤にでもならない限り、無理だったりして」笑いながら彼が言った。
 でもわたしはさっきの言葉にぼーっとなって、美香のことはすっかり頭から飛んでいた。


 ところが・・・
 本当に転勤の内示がでた。但し一年間の期限付きで。
 転勤先はタイのバンコクだそうだ。新しく設立した工場で、従業員の研修をおこなう。コンプライアンス重視の観点を初めから身に着けてもらう、徹底した研修を行うらしい。そのため数人の社員が派遣されることになった。そしてその辞令を受ける事になったのは ー 美香だった。
いよいよ出発という一週間前、二人はアジアンリゾート風の店で食事をした。籐のイスはゆったりとしていて、日本人の口に合わせた料理がおいしいと評判の店だ。
 「さぁ、話しなさい。友達以上から恋人になったいきさつを。もうひとりはどうなったのかを」後の質問はちょっと意地悪かも・・・
 わたしは美香の事だから、てっきり煮え切らないまま、「とりあえず一年だし」とか言って、そのまま出発するものだと思っていた。
 ちょっと照れくさそうに美香が話し始めた。
 「どっちがね、好きかって考えても、どっちも好きだし大切だったの。でも、失ったらって思ったら耐えられなかった」
 美香が飛び込んだのは、倉沢君の胸の中だった。
 少女マンガなら、きっと中田君だろう。ずっとそばにいてくれた人の大切さに、改めて気付いた・・・と、こうなりがち。
 「倉沢君ね、遠恋だけどちゃんと帰って来いって言ってくれたわ」
 「中田君には?」そこは避けちゃだめだしね。
 「ちゃんと話したよ。わたしね、学生生活がすごく楽しかったのね。だからその気持ちを全部修也に投影してたのかな。修也も同じかも知れない。話してて、ちょっと思った」
 ノスタルジーか・・・その感じ、わたしにも何となくわかるな・・・店の照明が少しだけ青みを帯びていることに今頃気付く。わたし、夢の中だというのに、間違いなく彼氏に恋してた。切ないな。出張が長引き、電話だけの恋だったのに・・・


 目が覚めたら沙和はすぐに気付く。携帯に未読メールが一件。合コンから始まる恋も確かにある。  





                              To be continued



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 625