高野と俺はあの資料が見つかったという場所へ来ていた、場所は山梨県の山奥だった。 そういえば武田家の本拠地は山梨県だったと俺は過去に高野の授業で習った事を思い出した。 周りを大木に囲まれていてその大木は俺たちを見下ろすかのように先端付近が下を向いていた。 資料が発見されたという地層を見てみると少年が化石探しのときに掘ったと見られる穴がぽっかりと開いていた。 「山中君、ここをもっと掘ってみたら違う資料が出てきそうだとは思わないかい?」 高野が独り言なのか俺に聞いているのか分からないような小さな声で言った。 俺が「出てくるかもしれないですね…」と消極的に言うと高野はもう携帯電話を握っていた。
それから30分くらい経っただろう遠くからジープが走ってきた。 恐らく高野が発掘するための応援を呼んだのだろう。 ジープが俺たちの目の前でドリフトしながら止まった。 ジープのドアが開き出てきた人物を見てみるといかにも怖そうな大男が立っていた。 その男は体と合わない高く柔らかい声で「高野さんお久しぶりです」と高野に挨拶していた。 しばらく高野と男は雑談していたようだがちらっと俺のほうを見て 「あっ、こんにちは私、長井雅和『ながいまさかず』という者です、高野学級のOBです。」と挨拶してきた。 俺も高野学級のOBだったので意外と話が盛り上がった。 しばらく話した後長井は急に最初の怖い面構えに戻り「で、一体どうしたんですか?」 と俺の顔の近くに近寄ってきた。 「えーとですね…かくかくしかじか…」 顔が近いのでおどおどしながら今までの経緯を話すと長井は驚いた様子で高野のほうを向いた。 その長井の顔はまるでカバのようだった。 「高野さん、それ本当ですか?それが本当だったとしてどうしてそんな嘘をつく必要があったのでしょうか?」 「それを今から調べるのだよ、そんな事も分からないのでは君もまだ半人前だね。」 高野が軽蔑したような目で長井を見る。 「いえいえ、一応聞いてみただけです。」 と長井が高野の心情を読み取ったかのように言う。 二人のやり取りはまるでお笑いのコントのようであった。
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