ドアノブに手を掛けた俺だがあと一歩が踏み出せない、この先に何があるのか怖いのだ。 俺はしばらくそこに立ち尽くしていたが決心しドアを開けた。
ドアは音もせずに静かに開いた。 下を向いていた俺が顔を上げてみるとそこには見覚えのある男の後ろ姿があった。 佐々木だ!俺の足からは一瞬にして力が抜けて行った。 そんなはずはない!と自己暗示を掛けたかったがそれもむなしく男がこちらを振り返った。 やはり佐々木だ。 信じたくはない、でも信じざるを得ない。 佐々木がここにいる理由はただひとつ佐々木がこの薬を世界にばら撒いた当事者だからだ。 俺は返ってくる答えがわかっていたが聞いた。 「何でこんなところにいるんだよ?」 佐々木は何も言わない。 無言の答えが返ってきたことに憤りを感じた。 「お前は金のために地球上のほとんどの人類を化け物にさせた。これがどれだけのことか分かってんのか!?」俺は泣き叫びながら言った。 佐々木は何も答えない、俺はガンホルダーから銃を抜き佐々木の額に当て。 「言え!言うんだ!」俺が何回も繰り返し言うと佐々木が重い口を開いた。 「俺じゃない!俺じゃないんだ。俺は世界に薬をばら撒いた科学者を告発するためにある文章を書いたんだ。」 その瞬間俺の脳裏にあの告発文が出てきた。 これを書いたのは佐々木だったのか。 そう思ったと同時に文章の入ったメモリースティックが自分のポケットにずっとしまってあることを思い出した。 俺の手はポケットへと伸びて行きポケット内で手ごたえがあった。 つかんでみるとやはりそれはメモリースティックだった。 俺は佐々木に「これの事?」と言いメモリースティックを頭の上に掲げた。 「そうだ、それだ。お前全部読んでないのか?」佐々木が言った。 ちょうど目の前にパソコンがあったのでそれにメモリースティックを差すと告発文が出てきた。 その下に続きがあることに俺は今気づいた。
俺は息子を守るため、家族を守るために告発する。 たとえ自分の命が消えたとしても、歩だけは死なせない。
俺の目からは大粒の涙が流れた。 佐々木は俺の親父… 「分かってくれたか?」佐々木、いや親父は俺に聞いた。 「分かったよ。親父。俺にも家族がいたんだ…」 親父は俺を抱きしめた。 「ごめんな…止められなくて。」親父が申し訳なさそうに言った。 「しょうがないさ、今から止めに行こう。」俺は励ますように言い返した。 俺と親父は歩き出した、これからの世界を変えるために、真の平和を求めて… 〜END〜
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