「夏の炭酸水」
子供の頃は苦手だった炭酸水が今はゴクゴクと飲める。
冷房の冷たい空気が首を振る扇風機の風に運ばれ、肌を過ぎると、それは高原を思い出させた。
夏休みはキラキラしていた。あの頃は昨日や明日はなくて、いつも今日があった。
子供の頃のあの、同じ時間がいつまでも続くような感覚、夏草の香りとともに思い起こす。
いつしかその魔法もとけ、そうして時計の針が進むままに押し出されていった。次へ、明日へと。
生まれた日からここまで、自分は自分であっても、好みも変われば、感覚も変わる。象る細胞も始終交代したり零れていったり。
地球も刻々と変化している。季節の習慣も人が創り上げた文化さえも、星の時間にいつか呑み込まれるのだろう。
あのキラキラした夏休みが思い出に仕舞われたように。
* * *
「野良猫」
死にたいとは思わないけど 生きたいとも思えない
シュレディンガーの箱の中 蓋を開けた人がみつけてください
運命の采配を受け入れるしかなくても心の奥で奇蹟を願い 矛盾する感情をどうしたらよい
力が抜けていくのを感じる 望む風景はもうどこにもないのかもしれない
原点に還るだけなのか 生きるということは
0160524/0601)
|
|