「自我」
消えてゆくだけなのだと
深まる夜の静けさに想う
悲しい思い出ばかりでも
その意識は貴く愛おしい
真昼の空の青さに焦がれ
真空の闇の深さに怯えた
何者であるのかと求めて
何者でもよいのだと諦め
君がいたから命ながらえ
君が越えゆくを見届けて
私は今ここにしかいない
目を閉じれば存在しない
私は今ここにしかいない
その意識は貴く愛おしい
* * *
「for an instant」
好きなものを思い浮かべる
窓辺の陽だまり
庭の花
お気に入りのソファ
日々の中にあるそれらを思い浮かべる
温もる毛布
君の声
珈琲の香り
温かな暮しに包まれている
その瞬間の
やがてどこかに折り畳まれゆくものたち
(0160226/0160226)
|
|