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作品名:繋ぎあわせる物語 作者:鳴瀬羽迦

第79回   All Flesh


 
  


  甘い匂いがする 砂糖を焦がしたような 粗目の 残暑に蜃気楼がつづく


  



『All Flesh』





闇に溶込むと

自分の姿さえ境界線を失う

ましてや傍らの君は

ほんとうに存在するの

でも触れれば形は温もり

この柔らかな物体の中に

生きとし生ける私たち

鬩ぎあいながらも

人の目はなぜ 空を青と捉えたのでしょう

海はなぜ 空をさらに深く写すのでしょう

闇には色はなく

透明なのに何も見えない

でも形をなぞれば存在し

そこには想う心が育まれ

彼らの目にも空は青く映る






* * *






  沖合のたっぷりした波のように脳裡にメロディがゆうらり浮かぶ
  それが幾重にも重なって 歌声や楽器の音もまざりあう だけど
  私は表現する術を持たなくて 波は岸辺の砂に 染み込んで終う









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