甘い匂いがする 砂糖を焦がしたような 粗目の 残暑に蜃気楼がつづく
『All Flesh』
闇に溶込むと
自分の姿さえ境界線を失う
ましてや傍らの君は
ほんとうに存在するの
でも触れれば形は温もり
この柔らかな物体の中に
生きとし生ける私たち
鬩ぎあいながらも
人の目はなぜ 空を青と捉えたのでしょう
海はなぜ 空をさらに深く写すのでしょう
闇には色はなく
透明なのに何も見えない
でも形をなぞれば存在し
そこには想う心が育まれ
彼らの目にも空は青く映る
* * *
沖合のたっぷりした波のように脳裡にメロディがゆうらり浮かぶ それが幾重にも重なって 歌声や楽器の音もまざりあう だけど 私は表現する術を持たなくて 波は岸辺の砂に 染み込んで終う
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