船の霧笛はどこか 深海の鼓動のようでもあり…
* * *
『MERMAID』
あの子は アクアリウムが大好きで
水槽をみつめる目の奥には
昔 好きだった男の子の面影をくゆらせていた
魔法みたいな 深海色の照明に
気持ちはタイムスリップする
初めてのデート はにかみながら手を繋いだ あの頃へと
水のトンネルをくぐって イルカのお腹を眺めて
泡になった 遠い海の記憶 さらに辿る
陸に焦がれて 失ったものを取り戻せそうな錯覚が
気づけばいつも 寄り添う誰かが変わっても
心の奥には 遥かな日のクジラの歌
変わらずに流れ 思い出の中に還る 人魚となって
* * *
手放した日々の思い出は美しい ここにある過去は辛い いっそ手放そうか…
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