まだ覚えている とても印象的で 好きな夢の光景 いつかみた物語
夜の暗がりに まばらな人影が浮かびあがる
誰かに寄り添っていた 誰かが寄り添っていた
まだ 朧げな視界 辺りに目を凝らした
そうして 煌々と燃える朱赤の炎をみつめる 自分に気がつく
その炎を真中にして まばらな人影は 幾重かの輪を描くように 所々に座っていた
ある人は一人で ある人達は数人で また一塊のグループになって
炎に照らされた 横顔や 影になる背中に 何かもの悲しさをを感じた
その輪の周りでは かげろうのように揺らめく 踊り子たちが
色とりどりの衣装を身にまとい踊っているのが見えた
音楽が鳴っているようでいて 何も聞こえない
あまりの静けさの その寂しさに耐えかねて 傍らの誰かに尋ねた
「ボクたちはどこから来たの?」
夢の中の私は 小さな男の子だった
傍らの誰かをみあげ その顔をみつめたのだけど
その視線は 顔を上げ 自分をみつめている小さな男の子をみつめ返していた
「宇宙」
と一言 それは柔らかな呼吸のような声が 小さな男の子である私の耳に聞こえた
とたんに聞き返した
「それはボクたちが 今 いる場所でしょ?」
ほんのいっときの沈黙が流れた
ほんのいっとき なのに
果てしなく駆け巡れるほどの 間があるようにも感じた その時
小さな男の子の私は 傍らの誰かの口元がかすかに動くのを みた
「生まれたんだよ」
とても柔らかく包み込まれるような感覚とともに そう 静かに 響いてきた
その唇の動きを真似て 言葉をなぞった 「ウマレタンダヨ」
煌々と燃える炎に 再び顔を向け もう一度 深く頷くように呟いた
「ウマレタンダ」
何かが 胸の奥に 呑み込まれていった
辺りは相変わらず とても静かな 夜の空間で
踊り子たちが 輪の周りで 踊るのが見えていた
まばらな人影も皆 炎の方を向き 揺らめく火に 照らされているのが見えた
でも寂しさやもの悲しさとはうって変わり 優しい感触が漂うのを思った
それは 寄り添う誰かの 存在そのもののようでもあった
ただ ずっと それを感じていた・・・・・
幾重もの輪の真中に燃える炎をみつめて。
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