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作品名:散文詩編 HARU-NATU-11 作者:鳴瀬羽迦

第1回   Warmth



   キミは教えてくれた
   ひとりは寂しいと
   皆といっしょが楽しいでしょう
   だから生まれてきたのだと




幼い頃から見上げていた空は
ビルや山や樹々に切り取られ
窓枠のように縁取りがあったから
形のない空の下は きっと
あまりに広大で きっと
果てしない孤独を感じるかもしれない。



まるで小さな星から宇宙に放り投げられたように
遠ざかる太陽が無数の恒星の一粒になって
くるくると 回る銀盤の中を踊り始めたら
もうどこに地球があったかもわからなくなった
それはとてもつもなく寂しい想い。



胸が押しつぶされそうに苦しくなり
やがて無数の恒星も吸い込まれるように
やがて銀河で織られた羽衣を纏うように
この身体のどこかに地球という小器官を持った
太陽系という細胞があるのだと
ただ青い星を思い出しては愛おしく思い。



幼子は自分がどこにいるのかわからないのだ
楽しい場所があるよと教えてもらうと
そこへ行きたくて行きたくて心ばかりがはやって
そこへ辿り着いていることに気がつかない
そしてその場所はどこにあるのとチンプンカンプンに尋ねてみる。



静寂に包まれた 耳がないから
暗闇に佇む 目がないから
言葉にできない 口がないから
手をのばしたい 手をのばしたい
手がなんであるのか わからなくても
渦巻く想いを 想いが それは衝動のように弾けた。



遮るものもない拓けた地を
海風の渡ってくる平野を歩いていた
傍らに誰かいたらと ふと
キミがいたらと ふと
恋しくなるでしょう 手をとり握りしめたくなるでしょう。



温もりのある世界に 今 たゆたう。





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