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作品名:静夜想詞 作者:鳴瀬羽迦

第3回   いつもの道/空を見上げて
いつもの道




きれいに雑草が刈られていた。
向きだしになったコンクリートやアスファルトの剥がれ目。



雑草たちは、そんなところに芽吹き根づいていたんだね。



残された根は狭く開いた地面の中に息をひそめているのかな?
こぼれ種は上手い具合に土を求めて割れた隙間に潜り込んでいる。



暖かな日には春が来たのかなと、
あわてん坊の新芽が真っ先に顔を出すのが思い浮かぶ。



そして次々と芽吹いて 背を伸ばし生い茂る。
ささやかな花の季節をすぎれば 実を結び 再び種をこぼす。



その繰り返される生きる命の力強さに
押し広げられるコンクリートやアスファルトの剥がれ目。



舗装が修繕されることもなければ いつかは雑草たちの楽園になるかな?
スコップも歯が立たない硬い覆いを耕しているようにもみえて。



彼らは生きた土を取り戻そうとする大地の密やかな働き手。





No.041108

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空を見上げて




今日の雲は大胆な模様を描いて空を包むように渡っていた。
落とし穴みたいな雲間はすっきりとした空色を映す。



夜にもなれば雲間は深海の青を思わせる色に深まり、
星が澄んだ光を放つのが雲の動きに見えたり隠れたり。



千切ったような雲の端や風に伸ばされた滑らかな曲線、
なんだか心模様みたいに思えてくる、風に伝言を託してみた。



港の方向へ目を向ければ、赤い夜空。
雲のドームに都市の明りが反射している色、奇麗だと思ったことはない。



星の変わりに、飛行機がライトを明滅している。
あっちにも、こっちにも、旅客機の航路が走っている。



ときどき小型機やジェット機やヘリコプターが低空に加わって、
辺りの静けさを破る。



でも、それに馴れてしまった耳は気にもかけないのだろう。
騒音に馴れた耳は、風の声を聴かない。





No.041114


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