狂想戯曲
あの子の涙がぽたりと 宇宙に零れた 永遠に消えない染みとなって 宇宙は記憶した
例えば宇宙は記憶の海を持つ 記憶の海は全ての魂に通じている 訳もなく悲しくなるとき 魂は記憶の海を漂っているのだろうか
昆虫ですら共喰いはしても 無意味な殺戮はしないのではないか 人間の理性は狂いやすいのか 狂う それが人間なのか
怒り 哀しみ 苦しさ溢れかえれば 魂は混乱する 感情は波打つ 秩序を失う意識に生命力はどう働くか 人間は増殖する欲望に喰い尽くされるのか
感情は諸刃の剣となる 遺伝子は選ぶかもしれない 感情のない生命体を その存続のために
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傷つく者はいつも……
ジェット機の音が この頃 頻繁に聞こえて来る 昼夜を問わず とても頭が重く感じる中で 何時か見た絵を思い出していた
少年が描いた絵だ 友達を写生したものだと聞いた 粗雑な紙にえんぴつで それでも丁寧に描かれた絵だった
そこには少年兵の姿が描かれていた だぶついた戦闘服を身につけ 重そうな機関銃を肩から下げていた
アフガニスタンの軍キャンプから 持ち出された一枚の子供の絵だ 友達を描いた少年も戦闘では 最前線に立たされる少年兵になるのだと 展示の係員より説明を受けた
今 何が必要であり 何が不必要か 私たちには解るはずだ あの少年兵達の頭上にミサイルを落として 何か解決するのだろうか
悪しき政権に彼らは未来を奪われて生きている テロと同じとも言えることをやり返し 彼らの命も正義の名の元に奪うのか それは正義なのだろうか
どの地にも人が暮らし どの地にも幼い子供達がいる どの地にも家族が身を寄せ合う 歴史を振り返れば有事にはいつの時であっても 傷つくのはそんな私たち市井の衆なのではないか
(作詩背景:9.11のテロ後、米軍のアフガニスタン侵攻決定のニュースを見聞して)
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