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作品名:詩抄 V 作者:鳴瀬羽迦

第2回   狂想戯曲/傷つく者はいつも……
  


  狂想戯曲




あの子の涙がぽたりと
宇宙に零れた
永遠に消えない染みとなって
宇宙は記憶した


例えば宇宙は記憶の海を持つ
記憶の海は全ての魂に通じている
訳もなく悲しくなるとき
魂は記憶の海を漂っているのだろうか


昆虫ですら共喰いはしても
無意味な殺戮はしないのではないか
人間の理性は狂いやすいのか
狂う それが人間なのか


怒り 哀しみ 苦しさ溢れかえれば
魂は混乱する 感情は波打つ
秩序を失う意識に生命力はどう働くか
人間は増殖する欲望に喰い尽くされるのか


感情は諸刃の剣となる
遺伝子は選ぶかもしれない
感情のない生命体を
その存続のために




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  傷つく者はいつも……




ジェット機の音が この頃
頻繁に聞こえて来る 昼夜を問わず
とても頭が重く感じる中で
何時か見た絵を思い出していた


少年が描いた絵だ
友達を写生したものだと聞いた
粗雑な紙にえんぴつで
それでも丁寧に描かれた絵だった


そこには少年兵の姿が描かれていた
だぶついた戦闘服を身につけ
重そうな機関銃を肩から下げていた


アフガニスタンの軍キャンプから
持ち出された一枚の子供の絵だ
友達を描いた少年も戦闘では
最前線に立たされる少年兵になるのだと
展示の係員より説明を受けた


今 何が必要であり 何が不必要か
私たちには解るはずだ
あの少年兵達の頭上にミサイルを落として
何か解決するのだろうか


悪しき政権に彼らは未来を奪われて生きている
テロと同じとも言えることをやり返し
彼らの命も正義の名の元に奪うのか
それは正義なのだろうか


どの地にも人が暮らし
どの地にも幼い子供達がいる
どの地にも家族が身を寄せ合う
歴史を振り返れば有事にはいつの時であっても
傷つくのはそんな私たち市井の衆なのではないか



 
 (作詩背景:9.11のテロ後、米軍のアフガニスタン侵攻決定のニュースを見聞して)


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