月野原を行く
流れる川面に 連なる人々がいた 覗き込んだら ふいに足を掬われた
溺れそうになって 岸辺の草を掴んだ 必死に 這い上がる
びしょぬれの心が 震えていたけど 震える心を 愛おしく思った
川面を右へ左へと 疑うことなく流れる人々は 魚の眼をしていた お揃いの銀のウロコを鎧にしていた
水の流れは 強引に勢い増す 大海を目指しながらヘドロの沼に嵌る 擬餌に騙され 釣り上げられても終う
野原の風は 涼しいよ おいでと手招きするの 誰だろう
野に咲く花を 気ままに楽しみながら 月に 囁きながら ぷらりふらりと歩いて行く 道はないけど
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花たちは歌う
一雨ごとに 空は輝いて 風が心地よく
花たちを見てごらん 歌っている ひとときの季節を 風に揺らぎながら
此処においで 気難しく結んだ口元に 歌をあげましょうと ほころんで微笑んで 揺れている
眼に映るものみんな 嬉し楽しい 手に触れる慈しむものすべて 愛おしく狂おしく
眩しさの季節 抱きしめたなら いつしか心は風となり 歌となり
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