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作品名:詩抄 IV 作者:鳴瀬羽迦

第5回   流れるままに委なりて/静穏




  流れるままに委なりて




息を潜めるように

静かなる時を

流れる風のままに

想い添わせて

ただ深い眠りにつくためか

ただ目覚めるためにか

今を歩いている

燻る修羅の心ももう

遠く置き去りな気がする

全てありのまま

怒りも悲しみも淋しさも

そのまま記憶されてゆく

喜びは小さな鈴の音のように

心地よく響くけど

この眼を透して

見るものたちはいつか

この眼を失うとも

また誰かの眼に映り

静かに繰り返されるのだろう

その流れに委ねられてゆく

その一筋になってゆく





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  静穏




穏やかな気持ちがここにあって

風のない湖水に浮かぶ小舟の上にいるような

新緑の香りと透明な光を浴びて

今は漣も立てたくないから

漕ぐ手を止めて空を見つめている

時々こんな気持ちがやって来る

怒りも消えて

でも喜びもない

ただ静かに呼吸を繰り返し

聴こえてくるのは時を刻む音だけ

ぼんやりとスクリーンの物語を追うように

今日の日が明日へと移り変わって行く




 【ルビ】漣=さざなみ


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