風の渡る丘 桜の翁が若葉を揺すり さわさわと歌う 針葉樹は天を指す梢を こうごうと唸らせ イチョウは囁くように 木の葉を震わす 見渡す空に 雨を含む雲が集まってくる 流れる風は身体をくるみ 次には過ぎ去り 時代(とき)を忘れる 風の渡る丘に立つと 眼下の谷間に今は 煩雑な街が横たわっていても 耳もとで鳴る 風の音は懐かしさを呼ぶ 悠久という 懐かしさを -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-* 写真 ふと 目に映る 可憐な花 きれいな空の雲の形 心に触れる風景 覚えていたい ありのままに 感じた気持ちと一緒に いつまでも そのままに でも 明日には違う顔 記憶の箱もいい加減 風化する気持ち 止まらない ファインダーを覗いて 私の目の代わりに 私の記憶の箱の代わりに 時を切り取り 仕舞っておこう 感じた気持ちと一緒に いつまでも そのままに
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