20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:詩抄 II 作者:鳴瀬羽迦

第3回   和/生い立ちの町
     
     
     
     和
     
     
     
     
     きみの横に腰掛けて
     小首をかしげ本に見入る
     きみの横顔をみつめている

     そのひとときにすら
     ふと 涙が込み上げてくる
     そっと こらえて

     伝わる存在の温もり
     感じる生きている歓び
     思う この輪の守手であろうと

     私に出来るのはそれだけ
     暮しという生活の場で
     きみに伝えられることは
     みんな伝えよう
     よい手本わるい手本になって

     そうして ほんの少し未来に混ざる
     ここにある想い
     
     
     
     
     
     -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
     
     
     
     生い立ちの町
     
     
     
     
     ちいさな頃に暮らした町を
     ふいに訪ねてみたんだ

     思い出の詰まった
     マッチ箱みたいな団地

     解体作業が行われ
     姿を消してゆく途中だった
     様変わりする町に涙がおちた
     
     故郷のない町ネズミの
     心の古里だった
     
     まだちいさな私が住んでいるような
     そんな思いがあったのだけど
     
     夢中になって遊んだ
     公園のブランコを漕ぐキィキィいう音も
     探検ごっこの空き地の笑い声も
     みんな幻になって木霊するばかり
     
     見上げた空だけ幼い日のままに映った
     「大きくなったね」と
     雲の口はにっこり微笑み
     風の手で頭を撫でてくれた
     
     「ありがとう」
     私を育ててくれた生い立ちの町
     最後の面影を胸にしまったよ
      
      
     
     
     


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2559