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作品名:「神秘の因果」 作者:天鷲乃扇

第2回   生存者
地上13階。やはり夜は夜景が綺麗だ。テレビを付けると、3か月前の飛行機が墜落するという事故での生存者を映し、生存した理由を語っていた。その中には友人の話や家族の話、はたまた人生論や運命論などの哲学的なものまで出てくる。生存者10名取材を受けたのは5名だ。
その最後にコメンテーターが「まさに偶然の中にも必然があり、それはまるで神秘の因果の様だな」と言った。「神秘の因果」なんて変な言い回しだなと思っていると、昔のクラスメイトを思い出した。高校だったはずだ。彼の持論は「必然も偶然も神が作っているから、それらは全部人間の理解を超える神秘なんだ」というのだったはずだ。どこの教徒?と友達と笑っていたが、「神秘の因果」というのと通ずる物がある。
 それから30分後。すぐ近くで爆音がした。丁度ベットにいたから、咄嗟に布団を被った。感覚を失う。

 地上10階。ただしそれは過去であっていまや地上から数メートルまでになっていた。動こうと思ったら激痛が走った。全く飛んだ不幸だ。まぁ生きていた分良いか。確か友人の今泉がちょっと前に飛行機の墜落で奇跡的に助かったと言っていた気がする。そういえば今泉とは共通点が多かったな。今度は「奇跡的に生存した」というのが共通か?
 シンクロ二シティ。ミステリーが好きな今泉はそんな言葉を言っていた。二つの人や事柄が異常に似ているって話だ。「こんな広い世界なんだから、シンクロニシティも大してミステリーじゃないだろ」と言ってみたが、なんか反論していたがその辺は忘れた。今俺はあいつみたいに生存しきれるだろうか。

 屋上。17階の上だ。一仕事終えた達成感にはぴったりだ。俺は詐欺師という職業に悔いは無い。チェスや将棋、囲碁などの戦略ゲームが好きな俺にとっては戦略をたてて、それを実行し成功することの心地よさ。ただこの世界には罰という物が存在するのか、いま俺が置かれている状況は最悪だ。すぐ下に幾つもの爆発が起きている。綺麗にビルが落下したお陰で無傷だったが、9階にある俺の部屋は廃墟となっているだろう。あそこには金庫があったはずだ。遠くで救急車や消防車、パトカーなどのサイレンが響く。ここで金庫を捜しに行くのはリスクが高い。警察だけには係わりたくないからな。別荘にもいくつか財産を蓄えておいたし、とりあえずそれで生きてこう。サイレンとは逆の向きに走る。


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