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作品名:『ダンナさまは18歳。』 作者:英庵

第8回   半信半疑

6月15日(月) ドクターEコスメの販売員の朝礼。

加賀店長が店員を前にいった。
「今日は販売促進案の締切日です。まだ提出されていない方は企画書を提出してください。」

「はーい。」早智子は思わず声を出してしまった。
 店長をはじめ他の社員もおどろいて早智子のほうを見ている。

店長「早智子さん、朝からめずらしく元気いいわね。 いい案ができたのかしら。」
  半信半疑の目で店長が早智子に話しかけた。

早智子「いいえ。それなりですけど。」
  今までまともな案を出したことのない早智子は、今回の企画が会社の中でどれくらいのものか
  全く見当もつかない。
  みんなの視線が集まる中、早智子はうつむきながら昨日仕上げた企画書を店長に手渡した。

店長「今回のはいつもより厚いわね。」
  店長は微妙な言いまわしで早智子の企画書を受け取った。

翔子をはじめ、未提出だった数人が企画書を店長に渡し、そのあと店長がいった。

店長「今週中に候補を2〜3つに絞ります。
   金曜日の昼にその候補案と発案者を掲示板に張り出しますので、
   張り出された人は来週水曜日のプレゼンに向けて準備を進めて下さい。
   以上で朝礼を終わります。」

翔子「残るわけないよね。」 朝礼が終わると翔子が早智子に話しかけてきた。

早智子「そうよね。縁のない話しよね。」 龍之介に悪いと思いながらも早智子が続けた。

翔子「お兄ちゃんの案みたけど最悪。 私が考えるのとレベル変わらなかったわ。」
  兄に頼んでおきながら翔子はその出来をぼやいた。
  「早智子さんは自分で考えたの?」

早智子「うっ、うん。」龍之介との事をまだ誰にも話していない早智子は歯切れの悪い返事をした。

翔子「そうそう、早智子さん! 今週の金曜日またコンパあるんだけど参加しますよね。」

早智子「うん‥。 悪いけど止めておくわ。」龍之介の顔が頭に浮かび、断りをいれる早智子。

翔子「早智子さん、最近付き合い悪いですよね。 体調良くないんですか?」
  心配そうに翔子が早智子の顔をのぞきこんだ。

早智子「そうじゃないけど、気分がのらなくて‥。」

翔子「ひょっとして彼氏ができたんですか。 あの喫茶店の男の子だったりして‥。」

早智子「そんな訳ないじゃない。 相手は高3よ。」
“しまった!”早智子は心の中で思ったが、平静を装った。

翔子「へえー。高3だったんだ。」何かを疑う眼で早智子の顔をのぞきこむ翔子。

早智子「ほらこの間、花のお礼に行ったじゃない。その時に言ってたのよ‥。」
  なんとか切り抜けようとする早智子。

翔子「まあいいか。じゃあ、あと一人誰にしようかな。 希?いや、希はダメ、ダメ。」
  独り言をいいながら翔子は去っていった。



 週末の6月19日(金) 昼休み


翔子「早智子せんぱーい。 たいへーん!!」
  向こうから大声を出しながら翔子が駆けてくる。
  「先輩、残ってますよ。2人に‥。」

早智子は何の事か分からない?

翔子「販売促進案ですよ。 奇跡ですよ。奇跡!」ちょっと失礼な言い方である。

早智子「本当に?!」早智子にも予想外の出来事。
  “嬉しい”というより、自分に半信半疑。 

翔子「すごいですね。私たちの中から最終候補者が出るなんて。しかも早智子先輩!
   奇跡ですよね。 今日の合同コンパ、私にもいい人が現われたりして‥。」
  空想の世界にはいる翔子。翔子のほうが完全に舞い上がっている。

早智子は翔子の腕をつかむと、恐る恐る一緒に掲示板を見に行った。


<ドクターEコスメ 2009 販売促進案 最終候補者>

□孫 信義 営業企画部  案:『ドクタークーポン』の贈呈

□河野 早智子 販売部  案:『誕生花の香り』の贈呈

プレゼン日時: 6月24日(水) 15:00〜17:00
 場  所 : 第2役員室


早智子「もう一人は営業企画部の孫さん! プレゼン場所は第2役員室!」
   「私、もうダメ。」
  早智子は翔子の肩にもたれかかった。

翔子「そんなこと言わないで頑張って下さいよ。 販売部の期待なんですから。」
  「私、今日のコンパやめて手伝いますから‥。 やっぱ、それは無理!‥」

親友の翔子に説得されて、渋々うなずく早智子だった。


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