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作品名:『ダンナさまは18歳。』 作者:英庵

第5回   初デート

6月13日(土)朝
龍之介がやって来るのは昼なのに、朝の6時から目が覚め
一時間近くも布団の中から天井を見つめている早智子がいた。

“それなりの恋は経験してきたのに。 いくつになっても最初は緊張するものなのかな?”
 そんな事を思いながら、風呂場にシャワーを浴びにいく早智子。

「あまり眠れなかったから、シャワーで目を覚まそう。」
 そういいながら、長い碧の黒髪全体にシャワーを浴びせる。
 胸は人並みだがプロポーションはなかなかのものである。

「いやだぁ。目がむくんでるよお。」風呂場の鏡をのぞき込みながら右目の下に指をあてた。
“まあいっか、龍之介は高校生だし。 最初っからそいうことにはならないだろうし。”
 そう自分を納得させると、洗面所に出てバスタオルで体を拭きはじめる。

“今日は何を着ようかな。 女の子をアピールしても仕方ないかな?
 家の中だしパンツでいいや。”
 そう思い、クロップドパンツとチュニックブラウスの組み合わせに決める。

「さあ、朝ごはんにでもしよっかな。」
 体を拭いたあと、家着のスウェットを着ると
 早智子は昨日ヘブンイレブンで買ったミックスサンドとカフェオレを冷蔵庫から取り出した。
“今日のミックスサンドとカフェオレはいつもより美味しいね。” そんな気がする早智子。

朝ごはんを食べたあと、時計を見るとまだ8時すぎ。
「時間があるから、販促案でも考えよっと。」
 そうつぶやくとオレンジの椅子に座って考えはじめた。

 ‥‥‥‥‥。


時計を見ると、11時を回っていた。
「もうヤンピ。」あきらめのいい早智子の声が部屋に響いた。

「そろそろ準備するか。」
 そう言うと、ナチュラルメイクを手際よく仕上げた。
「さすが、化粧品販売員!」翔子がいたらそう声をかけただろう。

そして、上下のスウェットを無造作に脱ぐと白のクロップドパンツと淡いピンクのチュニックブラウスに着替えた。
最後に、ランコムの香水を軽くふりかけたが、その匂いが小さな部屋に充満した。

その後テレビでお茶を濁すことにした早智子。
だが、龍之介がくるまでの時間がやけに長く感じられる。

時計を見ると、1時02分。
元彼と別れて2年になる早智子はなんだか落ち着かなくなっていた。

「ピンポーン。」

「はあーい。」早智子は明るくインターホンに向かってこたえた。


「クロネコハヤトです。印鑑お願いします。」

“バカヤロー。” そう思いながら印鑑を片手にドアを開けた。
 配達員は明るい早智子の返事に答えるかのようにニッコリ笑っていた。
 届いたのは数日前にネットで申し込んだ『花の育て方』の本だった。

「どうも。」そう言って配達員を目で追うと、
 ドアの横で男の子がほほ笑んでいる。

「なんだ。来てたの?」早智子は明るく話しかけた。

「すみません。 ドアの前で深呼吸してたら、クロネコハヤトに先を越されちゃいました。」
 龍之介は正直に答えた。
 それがなんとも初々しく、早智子は笑って部屋の中へ迎え入れた。

 こうして羊年の2人の初デートが始まった。


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