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作品名:『ダンナさまは18歳。』 作者:英庵

第3回   憂鬱

ドクターEコスメの販売員の朝礼。
店長の加賀淑恵が店員を前にして強い口調でいった。

「ここにきて、売り上げは前年同月比を3カ月連続で下回っています。
 このままでは夏のボーナスもままなりません。皆さん、各自1件以上の販売促進案を考えて来て下さい。
 企画書の締め切りは2週間後の6月15日(月)とします。」

早智子「え〜。2週間後?! 私こういうの苦手なのよね。」

翔子「私もです、先輩。 それにこの不景気なら去年より売り上げ落ちるの当然ですよね。」

早智子「そうよね。 化粧品はハンバーガーや餃子とは訳が違うし。」

 もっともらしい事を言いながら、最初からあきらめている2人だった。

早智子「でも、案を出さないとまた店長にイヤミをいっぱい言われるし。」

翔子「何でもいいからそれらしい案を考えなくっちゃ。」

早智子「その“それらしい”が難しいのよね。 気が重いわ。」

翔子「ほんとです、先輩。」

早智子「あまり先輩、先輩、言わないでくれる。 だからコンパでもでるのよ。
    年上丸出しじゃない。」

翔子「すっ、すません、先輩。?」

早智子「‥‥‥。」


その日の昼休み
早智子は仲間と談笑することなく、あごに手のひらを当て物思いにふけっていた。

翔子「早智子さん。 珍しいですね。 販促案を考えてるんですか?」

早智子「ううん。そうなの。」
  本当は販促案など考えていなかった。ポプラに行ってから10日。
  それから何の音沙汰もない龍之介のことを想っていた。
  “あいつ元気にしてるのかな…。 携帯がないって不便だよなぁ。”
  自分から連絡の取りようがない現実に、やるせない思いの早智子だった。

それから11日が過ぎた6月12日(金)定時後

翔子「早智子さん。販促案できました?」

早智子「まだよ。この週末に考えないとね。」
  最近、『先輩』と言わなくなった翔子に少し満足しながら早智子はいった。

翔子「まだなんですか。私はバッチリですよ!」ホンワカと笑いながら早智子がこたえる。

早智子「販促案が苦手な翔子がバッチリ?!」

翔子「は〜い。兄が考えてくれてるの。明日メールで送ってくれるって。」

早智子「ナヌッ! ホントに、反則(ハンソク)ね‥。」

翔子「先輩、笑えないんですけど‥‥‥。」

早智子「また、先輩って言ったわねっ!!」

翔子「きゃー。コワイ。」 半分おどけながら逃げていく翔子。

その後ろ姿を見ながら、一人っ子の自分と、
まだ販促案ができていない自分と、龍之介のことが気になる自分に憂鬱になる早智子がいた。


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