卒業生:直樹の加入で、花屋『フィールド』の仕事も順調にまわり始めた。 『誕生花』の申し込みを確実にこなしていくにつれ、『フィールド』の知名度も少しずつ上がり、 『誕生香をもらおう』キャンペーンの売り上げも徐々に増えていった。
事務室のパソコンの画面を見ながら二宮さんが言う。
二宮さん「新しいことをやり始めると最初は大変だけど、だんだん龍之介のいった通りになってきたな。」
龍之介「いえいえ。私の至らないところを皆で助けてくれたお陰です。」
優太「お前の嫁さん含めてな。」
龍之介「へっ、へぇー。」照れくさそうに頭を掻く龍之介。
博美「私も龍之介みたいに幸せな家庭を築きたいわ。」 そう言いながらチラッと優太の方を見る博美。
龍之介「花好きな人が良いですよ。“悪い人はいない”ってさっちゃんが言ってました。」 さり気に博美をアシストする龍之介。
優太「いつまでもノロけてんじゃないよ。」博美の気持ちに全然気付いてない優太。
博美「当分無理かな‥?」 肩を落とし力なくつぶやいた後、博美は外の空気を吸いに行く。
二宮さん「さあさあ、今日も頑張るぞ。この調子で行けば、夏のボーナスは少しハズムぞ!」
全員「やったー。」 そう言って、皆は再び元気に仕事に取りかかった。
一方、ドクターEコスメの『今度は誕生“花”』キャンペーンも順調だった。 今回は、ポイントさえ貯まれば自分の好きな人に誕生“花”を配送してくれる内容で 売り上げをコンスタントに伸ばしていた。
売り上げと同時に早智子のお腹もふくらみ始める。 “そろそろ妊娠のことを知らせないといけないな。”早智子は思った。
まず最初に知らせたいのは勿論、翔子。 でも最初の妊娠だけにどういう風に知らせば良いか分からない。
そう思っている矢先、定時後の更衣室で念入りに化粧直しをしている翔子に出くわした。 ふと服装を見ると、気合の入った合コンの時に着る膝上のピンクのスカート。
スカートからすらりとした色白の足が伸びている。 だが、入れ込んでいる様子は無い。
早智子は翔子に近寄って話しかけた。 早智子「翔子、今日は合コン?」
翔子「いや、違うんだぁ。」 少し照れくさそうに話す翔子。
早智子「でも、勝負服着てるじゃん? ひょっとして、彼氏出来た?!」 早智子は眼を大きくしながら翔子に聞いた。
翔子「まだそんなんじゃないんだ。 でも、自然に楽しい時間が過ごせてるというか‥。」 翔子はホンワカと幸せそうな笑みを浮かべた。
翔子の話しによると、最近、久しぶりに高校の同窓会があったらしい。 その同総会で高3の時密かに想いを寄せていた健太君と再会し、いい感じになり 今日のデートとなったらしい。
早智子「翔子良かったじゃん。 頑張ってね!」
翔子「うん。 上手くいったら早智子先輩に一番に報告するね!」
早智子「うん、待ってるね。 で、実は私も翔子に一番に報告したい事があるんだけど‥。」 本当は景子さんに既に気付かれていたが、気持ちの中では翔子が一番だった。
翔子「何、なに?」 興味深げに翔子が聞いてきた。
早智子「実はね。」そう言って少し膨らみ始めたお腹に目をやった。
翔子「ほんとう! オメデトウ! いつから?」
早智子「今年の最初に分かったんだけど、たぶん年末に‥。」 今度は早智子が照れくさそうにいった。
翔子「えー。 ひょっとして、バースデー・ベイビー?! 身重で今までバリバリ仕事してたんだぁ。 尊敬しちゃう!」
早智子「龍ちゃんがいろいろ協力してくれるし‥。」
翔子「健太君は協力してくれるカナ? そっか。その前にそこまで行かなきゃ!」
早智子「でも翔子。変な力抜けて今いい感じだよ!」
翔子「そう? ありがと。じゃ、頑張ってくるね!」 そういうと、翔子は夜の街へ繰り出して行った。
早智子「さあ、私も晩ご飯食べに帰ろっかなー。」 翔子の成功を祈りながら、龍之介がご飯を作って待っている姿を思い浮かべる早智子だった。
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