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作品名:『ダンナさまは18歳。』 作者:英庵

第28回   踏ん張りどこ。

翌朝

龍之介「じゃあ、さっちゃん先に行っとくね。」
  パジャマ姿の早智子に声をかけると、
  龍之介は気持ちを入れ替え花屋『フィールド』に向かった。

早智子は玄関で龍之介を見送り、冷蔵庫から龍之介の作ったレモン水を1杯飲んだ。
早智子「さあ、私も朝食べて、準備しよっかな。」

  最近は不快感も徐々に薄らいでいた。朝食のパンも喉の通りがだいぶん良い。

早智子は自分のペースでゆっくりと準備を済まし、
朝の8時前に家を出て待ち合わせ場所のNATSUへと向かう。

心地良い春の陽を受けながら9時前にNATSUに着くと、龍之介と翔君がもう待っていた。
早智子は翔君に向かって、エクボを見せながらいった。

早智子「翔君、今日はゴメンね。 情報処理学科の先生紹介してね。」

翔は早智子の顔を結婚式で知っていたが、
今日は大人の女性の魅力と、何かしらのプレッシャーに圧倒されていた。

翔「はっ、はい。 もちろんですっ。」
  そして、龍之介にこっそりいった。

翔「お前、あんな綺麗な嫁さんと夜寝てるのかよ。このヤロー。」

早智子は問題を乗り越えるたびに、人間としての良いオーラが出はじめていた。
龍之介は重大な状況にもかかわらず、この時は一瞬鼻が高かった。

しかし、すぐに現実に戻り翔に言った。

龍之介「そんな事いってる場合じゃないんだ。 頼むよ!」

翔「はいよ。 もちろんですっ。」
  同じセリフでも龍之介に対しては、当てつけがましいトーン。

しかし、朝のバイトで大変そうな事を感じている翔は、快く先生を紹介してくれた。


早智子「はじめまして。突然で申し訳ございません。ドクターEコスメの森山と申します。」
  そういいながら先生に名刺をさし出す早智子。

先生「情報処理学科の波留と申します。」
  そういいながら先生は早智子の名刺を見て“女店長?!しかも赤坂本店!”
  と言う感じで、まゆ毛をピクリと動かした。

早智子は先生に事の状況を丁寧に説明し、熱心にお願いし頭を下げている。
龍之介は“僕の事で頭を下げてくれている。”と慌てて一緒に頭を下げた。
横を見ると何故か翔も頭を下げていた。

先生もNATSUの卒業生がお役に立てるのならと前向きに検討し、
上司と相談して連絡をくれることになった。


早智子と龍之介は翔と別れ、それぞれの仕事場に向かう。

龍之介「さっちゃん、ありがとね。」

早智子「お礼を言うのは卒業生を紹介してもらってからで良いわよ。」

龍之介「そうかも知れないけど、僕いっぱい勉強させてもらったよ。」
  微笑みながら、しかし引き締まった表情で龍之介がいった。

早智子「そう? じゃぁ、卒業生を紹介してもらえたら、フランス料理ごちそうしてもらおカナァ〜。」

龍之介「えっ。 体の調子はだいぶ良いの?!」
  お金のことより、早智子の体調を心配する龍之介。

早智子「フランス料理はどうか分からないけど、“その位の覚悟はしておけよっ。”てこと!」

龍之介「もちろん。 任しておいて!」

早智子「今回、任せてこの状況だからなぁ。」龍之介をチラッと見ていたずらっぽく笑う早智子。

龍之介「それもそうだね。」と半分笑って早智子を見つめる龍之介。

しかしその言葉の中に、“今度は、僕がしっかりやるよ!” という覚悟を感じる早智子だった。

卒業生を紹介してもれえれば、卒業生と優太がパソコンに張り付いて『誕生花』の宅配処理を行うことができる。
梱包とお客の対応は、二宮さんと龍之介と博美、それに二宮さんの奥さんとバイトの翔と達也もいる。
なんとか切り抜けられそうだ。

NATSUを早智子と龍之介が訪ねてから3日間、
龍之介を始め『フィールド』の店員は朝6時から夜遅くまで必死に働いた。
精神的な疲れに加え体力的にも追い詰められてきていた。


そんな『フィールド』にNATSUの波留先生から電話が繋ってきたのは
4日目の朝11時過ぎだった。


「卒業生決まりましたので、明後日からお願いします。
 明日、顔合わせにNATSUに10:00に来て下さい!」


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