早智子と龍之介が結婚してから始めてのお正月が来た。 元旦は『ダンナさま。』の家族と過ごすべく、昨年のように初詣のあと龍之介の実家でお母さんのお節料理を頂く。
龍之介「ただいま。」
早智子「明けましておめでとうございます。」
お母さん「早智子さん、いらっしゃい!」
美雪「早智子姉さん、おめでとうございます。」
早智子「美雪ちゃん元気にしてた? はい、お年玉。」 そういって、ミニーちゃんの絵のついたポチ袋を美雪に手渡した。
美雪「ワァ、有り難う! あまり期待してなかったのに。」
龍之介「チョットは期待してたんだぁ。」笑いながら龍之介がいう。
お母さん「さあ、お食事始めましょう!もう準備できてるのよ。」 お母さんの一言で、家族4人はすぐにテーブルの周りに集まった。
早智子「わー、おいしそう。 龍ちゃんが料理上手なのはお母さんの遺伝かもね。」 料理できない自分を悪びれることもなく、早智子がいった。
美雪「♪ワタシガ スキナ クリキントン!♪」 鼻歌まじりに美雪が席につく。 続いて、早智子、龍之介、お母さんが席についた。
早智子「私、オトソ注ぎます。」 そう言って早智子は朱塗りの盃を取り、龍之介とお母さんそれぞれに上品にオトソを注いだ。
お母さん「龍之介、いいお嫁さんもらったねぇ。」
龍之介「へへぇ。」 龍之介は照れ臭そうに頭に手をやっている。
お母さん「仕事の方は頑張ってるのかい? 早智子さんを楽にしてあげないと。」
龍之介「頑張ってるよ。 仕事の内容はだいぶん覚えたから、今年からは仕入れを勉強するんだ。 だから朝も早くなりそう。」
お母さん「そうかい。で、あっちの方も頑張ってるのかい?」 少し意味深な笑顔で龍之介と早智子を見ながらお母さんが聞いた。
美雪は栗きんとんを食べる箸を止め、身を乗り出し聴いている。
早智子「‥‥。」
龍之介「正月から何いってるの。」
お母さん「正月だから聞いてるんだろ。 はい、数の子と昆布巻きお食べ。」
早智子「お母さん、昆布巻きも子孫繁栄にいいんですか?」
お母さん「昆布巻きには“よろこぶ”という語呂合わせと、“子生婦(こんぶ)”という語呂合わせがあってね、 一家の幸せと子孫繁栄を祈るんだよ。」
龍之介「へぇー。じゃあ一杯食べよう!」
お母さん「ところで美雪。さっきから栗きんとんばかり食べてるね。」
美雪「だってお母さんいってたじゃん。金運を招くって。」
お母さん「お金は自分で稼ぐもんだよ。」
美雪「‥‥。」 “お母さんがいうのも御もっとも。”
お母さん「昨年は龍之介と早智子さんが結婚して、龍之介が社会人になって。 早智子さんが店長になって。 たくさんいい事があったけど、今年はどんな年になるのかねぇ。」
龍之介「今年はもっといい年にするよ! さっちゃんとコラボできたらいいなと思ってる。」
お母さん「コラボって、お腹が出てくるやつかい?」
龍之介「なんで夫婦2人でお腹ブクブクになりたいんだよ。」
美雪「お母さんが言ってるのはメタボ。 お兄ちゃんのはコラボレーションって言って、 早智子さんとお兄ちゃんが仕事を協力して上手くやっていきたいってこと。」
お母さん「そうかい? なんか良く分からないけど仲良くやっておくれ。」
そんなこんなで、今年も家族4人で楽しい新年の門出を迎えた森山家であった。
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