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作品名:『ダンナさまは18歳。』 作者:英庵

第19回   バトン

“『誕生香』キャンペーン”も無事に終了した9月10日。
 その成果報告が総務部よりあり、キャンペーン中の総売り上げは前年比21.2%アップ、
 経常利益も前年比22.1%アップであった。

その報告の後、加賀店長と早智子は人事部長から呼び出しを受ける。


人事部長「“『誕生香』キャンペーン”成功して良かったですね。」

加賀店長「有り難うございます。 森山(旧姓:河野)さんが立案でも販売でも頑張ってくれまして。」

今まであまり店長から褒められた事のない早智子はなんだか心がこそばゆい。

人事部長「そうらしいね。 それで今度の10月からのことなんだが、加賀店長が赤坂本店から大宮支店に転勤になられる。」

 “やっぱり本当だったんだ。” 早智子は心の中で重大な事実を受け止めた。

人事部長「加賀店長のお父さんの介護が大変で、店長とお母さんで見守っていきたいとのことだ。
     会社としては痛手ではあるが、若い体制に切り替わるチャンスでもあると捉え
     加賀店長の要望を受け入れることにした。」

 “まさか。”と思いつつ、次第に早智子の緊張度が高まる。

人事部長「そこで赤坂本店長の後任だが、森山君にやってもらおうと思い今日2人に来てもらった。」

早智子「えっ。私、まだ30歳ですが。 私より上の人も多くいますし。」
  早智子は昨年の12月18日に30歳を迎えていた。

人事部長「だから森山君なんだ。この変化の激しい時代、若い人から熟年層までアンテナを張る必要がある。
     森山君は今パワーがあるし、きっとやってくれると思っているんだが。」

早智子「‥‥‥。」 早智子は“自分で年下から年上までまとめていけるのか。”本当に不安だった。

加賀店長「私からもお願いするわ、森山さん。 貴女ならやれるわよ。」
  早智子の眼を見ながらそういうと、店長はにっこり微笑んだ。

早智子は目の前の加賀店長を見ながら、脳裏には龍太郎と翔子の顔が浮かんでいた。


早智子「私、店長を頑張らさせて頂きます!」

人事部長と加賀店長の顔がほころぶ。

加賀店長「森山さんがんばってね。 不安なことがあったら何時でも相談に乗りますからね。」

早智子「有り難うございます。」 そういいながら、早智子は加賀店長に頭を下げた。

人事部長「大変なことも色々あると思うが、森山君頑張ってくれよ。」
  もう一つの噂の事をいっているかのように人事部長はエールを送った。


その日の早智子は早速龍之介にその事を話した。

龍之介「さっちゃん凄いな。 僕も頑張ろう!」

早智子「そうよ。 私が店長クビになったら龍ちゃん頼むわよ!」
  店長になる前から、クビになったときの事を想定している早智子。

龍之介「任せといて!って言っていいのかなぁ?」

龍之介がためらいながらそういうと、なぜか2人は顔を合わせて笑いはじめた。

“若い2人がこれから先を乗り切っていけるのか?”
 今年も窓辺に咲くピンクのガーベラだけが知っていた。


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