翔子「早智子さん、結婚式綺麗でしたよ。 私も結婚したくなってきちゃった。」
早智子「そう? そのうちいい人現れるって!」 幸せな早智子が余裕の発言?
翔子「ハネムーンはどこに行くんですか?」
早智子「ハワイとかに行きたいんだけどまだ未定なの。 龍ちゃんがお金貯めて連れて行ってくれるんだって。」
翔子「そっか。 ハネムーン行かなくても幸せそうだし‥。 仕事も順調だし。いいよね。」 「あっそうそう、早智子さん知ってる?」
早智子の“『誕生香』キャンペーン”は来月の7月で最終月を迎える。 その効果は絶大で、キャンペーン中の売り上げは21%アップとなっていた。
早智子「何が?」
翔子「加賀店長がこの9月で店長を辞めるってウワサ。 10月から実家のある大宮店に移るらしいですよ。」
早智子「えー。うそっ!」 早智子のプレゼンが成功に終わったのも加賀店長のアシストによる処が大きい。 早智子も加賀店長の幅広い能力を少しでも吸収したいと、前向きになっていた矢先の噂だった。
翔子「まだ続きがあるのよ。 その加賀店長の後任に早智子が候補に挙がってるんだって。」
早智子「うっそぉ!!」 「無理、無理、絶対無理!」
翔子「そうでしょ。ゴメン。でも、普通ならアラフォーの角さんなのよね。」 角登志子 42歳。売場の事ならなんも知っているベテランである。
早智子「私もそう思う。」
翔子「でも角さんなら夢がないのよね。」 「変化の激しいこれからの時代を角さんで大丈夫かな?って。 その点、早智子先輩なら今回みたいに何かやらかしてくれるカモみたいな‥。」
早智子「ありがとう。でも‥。」 早智子は今回の『誕生香』の案が、龍之介の一言がきっかけだったことを打ち明けるべきか迷っていた。 でも早智子より先に翔子が話しを続ける。
翔子「でも私、早智子さんの味方ですからね。 角派に負けませんからね!」 今回の早智子の次期店長候補の噂に対し、角さんを推すグループが早智子に対し不穏な動きを始めていた。 そう、嫌がらせである。
早智子「そういうことか‥。」 翔子の言葉を聞き、最近角派の早智子に対する視線が冷たいワケを理解する。
早智子「でも、その話しまだウワサでしょ。 今、どうのこうの言っても仕方ないよ。」
翔子「そうなんですけど‥。 でも、“早智子さんの味方”は本当ですからね!」 そう真剣な表情でいうと翔子は仕事場に向かった。
その後ろ姿を見送りながら、“翔子は一生の友達だ。”そう思う早智子だった。
その日、早智子は家に帰って龍之介に今日あった出来事を話した。
早智子「そういう訳よ。」
龍之介「そうなんだ。でもそんな話し何処にでもあるみたいだよ。僕がいるから大丈夫! そしてもし、さっちゃんが店長になったらまた2人で色々考えようよ。 前向きに進めばきっと上手く行くよ!」
早智子「有り難う!」 社会人になって数か月なのに、ものすごいスピードで成長している龍之介が目の前にいた。
早智子「そうね。また頑張ればいいよね。」 “私には味方が一杯いる。”そう思い、少しずつ精悍になっていく龍之介を見つめる早智子だった。
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