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作品名:『ダンナさまは18歳。』 作者:英庵

第13回   Butterfly

加賀店長と早智子が売り場にもどると、翔子が駆け寄ってきた。

翔子「早智子先輩どうでした?」

早智子は微笑みながら両手を頭の上で重ね、丸をつくった。

翔子「やったー!!」 翔子は自分のことのように大きな声をあげた。
それを聞きつけ販売部の人が集まり、早智子はみんなから祝福される。

そして加賀店長がいう。
店長「河野さん、今日はあがっていいですよ。疲れたでしょ。」

早智子「今日は助けて下さって有り難うございました。それでは、お先に失礼します。」

店長にそういうと、早智子は更衣室に向かい、帰り支度をはじめた。

龍之介に早く報告したい気持ちを抑えながら、早智子は駅に向かう。
そして電車の中で龍之介にメールをうった。

早智子:「さっき、プレゼン終わったよ。 龍ちゃんと私の案が採用されたよ!\(^o^)/」

龍之介:「オメデトウ! お祝いしなくっちゃ。 今度の土曜日?!」

早智子:「バイトは大丈夫?」

龍之介:「大丈夫ですよ。 実は土曜日、バイトするのやめにしたんです。(*^^)v」

早智子:「じゃあ、また1時ね。 マンションで待ってるからね!」

龍之介:「はーい。」

簡単なやりとりの中で、少しずつ愛を育む早智子と龍之介だった。


6月27日(土)昼

「ピンポーン」 12:56 インターホンが鳴った。

早智子「はーい。」エプロン姿で早智子は玄関の扉を開けた。

龍之介「どうしたんですか、早智子さん。」 “ゴクッ”っと唾を呑みこみながら龍之介がいった。

早智子「今日、私 手料理に挑戦したの。 パスタだけど。」
   そういいながら、玄関の鍵をかけ龍之介を部屋に案内した。

  テーブルの上には、タラコスパが山盛り状態で大皿の上にのっていた。
  横にはカップスープの素が粉の状態でカップに入れられていた。
  “料理もロクにできない”。 翔子のいう通りである。

  でも龍之介にとっては、そんな事はどうでも良かった。
  早智子が、自分の為に昼食を準備してくれている事が嬉しかった。

龍之介「“お昼食べないで”ってこの事だったんですね。」
  そう言いながら、龍之介は持ってきた小さな手さげの箱を早智子に手渡した。

龍之介「ケーキを買って来たんです。2つだけですけど。」

早智子が右頬にエクボを見せながら箱を開けると、
中から真赤なイチゴがたくさん載ったショートケーキが現われた。

早智子「わー、美味しそう。 ありがとう。」

龍之介「実は昨日、僕の誕生日だったんです。」

早智子「18歳の?」

龍之介「はい。」

早智子「じゃあ、今日はダブルでお祝いね!!」
  そういうと早智子はケーキを横に置き、カップにお湯を注ぎはじめた。

早智子「それでは始めましょうか。」

龍之介「早智子さん、販促案の合格?おめでとう!」

早智子「龍ちゃん、18歳の誕生日オメデトウ!」

早智子、龍之介「 カンパーイ!!」
 2人はカップスープで乾杯した。
 早智子のプレゼンの話しを聞きながら、龍之介はタラコスパをほとんど一人で平らげた。

龍之介「僕、ケーキ半分でいいです!」足を広げ、お腹をさすりながら龍之介がいった。

早智子「ラッキー!」
  そう言いながら早智子は龍之介のケーキを半分にフォークで切り、1つを自分の皿に乗せた。
早智子「このケーキ美味しいね。」 早智子は切れ長の目じりを下げながらいった。
  そして、あっという間に1個と半分のケーキを平らげた。

早智子「食った、食った。」そう言うと早智子は食器を片づけ、洗いはじめた。

龍之介「僕も手伝います。」
  龍之介は早智子の洗った皿とカップを布巾で拭きはじめる。

台所に並ぶ、早智子と龍之介。それは若い新婚夫婦そのものだった。

早智子「龍ちゃん、これで最後。」
  早智子は洗い終わった大皿を両手で持ち、龍之介に近寄って来た。
  大皿を両手で受け取ったとき、早智子から甘い薔薇の香りが拡がった。

龍之介が早智子に“女”を意識したとき、二人の眼と眼が合った。
早智子は皿を横におくと、そっと龍之介に顔を近づけ目を閉じた。

龍之介は早智子の小さな唇に自分の唇を重ね、ぎこちない手つきで早智子の肩の後ろに両腕をまわした。
しばらく抱き合ったあと、二人はベッドの上に身をまかせた。

テーブルの上で、今の2人を祝うかのように早智子の携帯がメロディーを奏ではじめる。
♪Butterfly 今日は今までの どんな時より 素晴らしい
 赤い糸でむすばれてく 光の輪のなかへ ♪

早智子と龍之介はこの日、心身ともに恋人になった。


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