6月20日(土)昼
新たな携帯を買い、昼食をすませた早智子は 時計が12:48を指すのを横目に見ながら自分の企画書のコピーに目を通していた。 結構やる気の早智子。
その時、 「ピンポーン。」インターホンが鳴った。
“宅配の可能性もある?!”そう思いながら、 「はあーい。」と明るくインターホンにこたえた。
「龍之介です!」
「今すぐ行くね!」そう言うと早智子は慌てて玄関に走り、扉を開けた。
早智子「早いじゃない。」
龍之介「1時までドアの前で待とうと思ったんだけど、待ちきれなくて‥。」 素直な感想である。
龍之介「はい、コレ。 『ポプラ』のドリンク券。 最終審査に残ったプレゼント!」 龍之介はそう言って、無料ドリンク券3枚を早智子に渡した。
普通の男性になら一言つっこむところだが、龍之介の懐事情を分かっている早智子は 「ありがとう!」と笑顔で受け取った。
早智子「実はね。今度の水曜日がプレゼンで“えらいさん”に発表しなくちゃならないの。」 そう言いながら龍之介を部屋に迎えいれる。
龍之介「すごいですね。」
早智子「でも私、なんか自信なくて‥。」
龍之介「結構デリケートなんですね。」 龍之介は“きれいなお姉さん”と思っていた早智子をこの時“かわいい”と思うと同時に抱きしめたくなった。 が、そんな勇気は今ない。
龍之介「また2人で頑張りましょうよ。」 早智子をリードする龍之介。
早智子「そうね。」
龍之介「何か“えらいさん”を納得させるものが欲しいですよね。」
早智子「‥‥‥。」
龍之介「僕、花の香の香水作ってみます。上手くできるか分からないけど。」
早智子「そんなの作れるの?」
龍之介「やってみないと分からないですよ。 早智子さんは発表がうまくできるように練習しておいて下さい。」 いつもとは逆に龍之介が仕切っている。
早智子「うん、わかった。そうする。」 早智子は龍之介をもう一人の男として見ていた。
龍之介「香りが一番ソフトな香水欲しいな。」
早智子「あっ、そう?」 そう言いながら早智子は自分のもっている中で一番自然な香りのものを手渡した。
龍之介「そしたら僕、火曜日の夜にまた来ます。」 香水のビンを片手に帰ろうとする龍之介。
早智子「ちょっと待って。」 そういうと早智子は机の上に置いてあるソフトサンクスの手提げ袋を持ってきた。
早智子「これ、あげる。 販促案考えてくれたお礼。」
龍之介「でもこれ高いんじゃ‥。」 そういいながら、龍之介は箱を開けてブルーの携帯を取り出した。
早智子「ポイントが貯まってたから大したことないわよ。 それより私、嬉しかったの。 一緒に販促案考えてくれて‥。」 早智子のほほが心なしかピングがかっている。
早智子「お金は私の口座から落ちるから、他の女の子に電話しちゃダメよ。」 早智子は笑いながら優しくけん制した。
龍之介「はいっ。ありがとうございます。」 生まれて初めての携帯を龍之介は嬉しそうに箱にしまった。
龍之介「それじゃあ、火曜日。」 そういって龍之介は家へと帰っていった。
早智子「さあ、私も頑張らなくっちゃ。」 そういって、決戦に向けパソコンでプレゼン資料を作りはじめる早智子だった。
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