雄太の左には小谷が座った。小谷は智美のことが好きだったが今でもそうみたいだ。 しかし、智美の反応はイマイチ。
“おい、オレもこうならんとってくれよ。”雄太は心の中で願い、愛のほうを見た。 愛は相変わらずポワンとしている。
左から小谷、雄太、智美、愛。 4人は3年6組で班も同じだった。
「乾杯!」山川の音頭で同窓会が始まった。
4人はすぐ31年前にタイムトゥリップした。 「ホンマうちら仲ええなぁ。」そんなことを言いながらあっという間に1時間が過ぎていった。
「せっかくやから他のテーブルも廻ってくるわ。」雄太が言った。
「そやね。」他の3人もそう言って席を立った。
雄太は6組のもう1つのテーブルに歩を進めた。
「おお。川島。久しぶり!森口博美を見るといつも川島を思い出すわ。」雄太が言った。 川島は元祖バラドル:森口博美の従姉妹である。 大きな目の川島は何もいわずにニコリと笑った。従姉妹の割には川島はおとなしい。
「モンダミンは使っとんのか?」無理やりな質問を雄太がした。
「そこまでしてへんわ。」川島が声を出して答えた。
「生きてた!良かった。」雄太がそういうと、横から山口が絡んできた。
山口は川島と違い、機関銃トークが売りだ。 「雄太君、久しぶり!元気してた?雄太君高校で俳優の堤田真一と一緒やったでしょ。 どんな人やった?何クラブやった。」一気にまくしたてた。
“おいおい、久々に会って聞くのは堤田真一かい。ミーハーか。”雄太は思ったが、 それを口に出すと2、3倍のセリフが帰ってくるため言葉を呑んだ。 「バドミントン部。」雄太が答えると、
「うっそー。意外やわ〜。でもカッコイイ。さすが真一君!」
「いや。俺がバドミントン部。」雄太が答えると、
「ダッサ〜。誰があんたのクラブ聞くねん。シ・ン・イ・チ・ク・ン!」
予想通りの反応に雄太は続けた。 「あぁ。クラブには入ってないで。俳優学校に通っとったみたいや。」
「ふ〜ん(ハート)。」山口は満足して去っていった。 台風一過 気分も晴れ ○
約30分が過ぎ、雄太は元のテーブルへと向かった。
すると愛の隣に一人の男が座っていた。 “高橋だ。”雄太は思った。 高橋は中学時代はおとなしく目立たなかった。 しかし、今はブランド品で身を纏っている。どうやら愛を口説いているらしい。
「おう高橋!久しぶり。えらい雰囲気変わったなぁ。」雄太は声をかけた。 愛は眼を少し細め、安心したような表情を見せた。
「そうか?オレはあんまし変わってないで。」高橋はサングラスに手をやりながら答えた。
雄太は高橋と愛の間に歩を進めた。
「あー面白かった。」そこへ智美も帰って来た。 智美も状況を察知し雄太の隣りに歩を進めた。
しばらくの沈黙。
「ほんならオレは他をまわってくるわ。」 高橋は2つ向こうのテーブルへと去っていった。
雄太と智美と愛は顔を合わせ微笑んだ。
そこへ小谷が戻ってきた。
「あんたいっつもタイミングずれとんな。」智美が小谷に言った。
小谷は訳がわからずキョトンとしている。 「へっへぇー。」と小谷が頭を掻いた。 そこには授業中に居眠りをした後、周りを見渡し頭を掻く中3の時の小谷の姿があった。
「はっはっは。」4人は顔を見合わせ、晴れやかな表情で笑った。
「そろそろ一次会を終了します。」 「二次会はカラオケボックス チャンカラで行います。」幹事の山川の声が響いた。
「二次会行こか。」雄太が言った。 「そうしよう。」3人が答えた。
「雄太君。」愛がポワンと雄太の横に近寄ってきた。 そして、雄太と愛は歩を合わせて歩きはじめた。 中3の時のお互いの姿を想い出しながら。
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