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作品名:NEW WORLD〜交響曲第二楽章〜 作者:月野 智

第46回   【ACTX 砲撃のコンチェルト】7

           *
「“ハデスの番人”が・・・・・・撃ちましたっ!」
叫ぶようなリンゲルの声に、ワダツミのブリッジが騒然となった。
強化型エネルギーの赤い閃光が暗黒の闇を二分し、ワダツミに向かって、凄まじい速度で迫り来る。
艦長席のショウゴは、厳しい顔つきをしたまま、何故か、回避命令は出さず、ただ、その黒曜石の瞳を鋭利に細めただけだった。
「ハデスの番人・・・何を考えている・・・?この軌道では・・・・・・」
「うわぁっ」という叫び声が、ブリッジのどこからともなく上った。
しかし、次の瞬間、強化型エネルギービームの赤い閃光は、ワダツミのシールドぎりぎりを掠め通り、船体を貫く事もなく、その四方を豪速で駆け抜けて行ったのである。
 オペレーター達が、一瞬呆然として言葉を失った。
 「照準が、合っていなかったのか・・・・・?」
 主任オペレーター、リンゲルが、驚愕に両眼を見開いて、思わずそんなことを呟いてしまう。
 その言葉に、ショウゴは、長い前髪から覗く黒曜石の瞳を、研ぎ澄まされたナイフの如く閃かせると、冷静だが、鋭い口調で言うのだった。
「違う、わざと外したんだ・・・・これは脅しだ」
ショウゴの言葉と同時に、ワダツミのブリッジに、けたたまし衝突回避警報が鳴り始める。
レーダー通信オペレーター、イゴールが、僅かばかり焦った様子で艦長席を振り返った。
「ハデスの番人の船が、ワダツミに急速接近中です!速度3500Sノット、距離10940!」
「撃たずにワダツミを止めるつもりか・・・・右舷補助エンジン出力最大、衝突を回避しろ」
 ショウゴの声と同時に、リンゲルが声を上げた。
「第二波来ます!!」
次の瞬間、ワダツミの巨大な風防越し、セラフィムの主砲がワダツミに向かって、一斉に赤い閃光を解き放ったのである。
その軌跡を、瞬時にモニターで確認したショウゴは、にわかに、先の司令を撤回せざるを得なくなる。
「っ!?・・・右舷補助エンジン逆噴射!全速回避!!」
ショウゴが、いつになく大きく声を上げた瞬間、右舷バーニアが最大出力で逆噴射をかけ、鋼色のワダツミの船体が、振られるようにして急速に右舷に移行した。
そんなワダツミの左舷を、高エネルギー粒子を撒き散らした赤いビームの閃光が、闇を二分するようにして豪速で貫いていく。
ハデスの番人レムリアス・ソロモンは、ワダツミを逃がすつもりなど端からないのだ。
そのつもりなら、今度こそ、こちらも受けて立つだけだ・・・厳しく眉間を寄せたショウゴが、鋭い声で言う。
「親衛艦隊全艦に通達、戦闘行動を即時停止し。ワープ可能宙域まで出力最大で全速前進」
「イエッサー」
リンゲルは刻みよくそう返答し、素早くコンソールパネルを叩く。
長い前髪から覗く黒曜石の瞳を細め、ショウゴは、冷静で鋭利な声色で言葉を続ける。
「戦艦ワダツミ、両舷全速出力最大。左舷補助エンジン出力120%。最高速度でハデスの番人に接近しろ。全主砲、右反転45度。照準修正1.018、距離9975・・・・」
ワダツミの全主砲が一斉に反転し、その砲門に青いエネルギー粒子が舞い飛んだ。
「撃て!!」
甲高い轟音を上げた高エネルギービームの青い閃光が、宇宙空間に幾筋もの帯を描いてセラフィムへと迸った。


            *
戦闘空母セラフィムのコントロールブリッジに、けたたましい衝突回避警報が鳴り響いている。
そんな中、ワダツミが主砲を発射したこと有視界確認したオリヴィア・グレイマンが、いつになく鋭い声を上げたのだった。
「ワダツミ、主砲発射しました!この距離では、シールドが持ちません!」
その言葉に動じることもなく、セラフィムの艦長レムリアス・ソロモンは、前で腕を組んだまま、優美な顔を鋭利に歪めると、落着き払った声色で言うのだった。
「主砲出力を60%に下げろ。照準修正0.778。距離9876・・・・撃て!!」
ソロモンの声と共に、セラフィムの砲門が虚空に粒子を舞い上げ、出力を落した赤いビームの閃光が、甲高い轟音を上げて一斉に発射されると、宇宙空間を駆けた赤と青のビームの閃光が、無限の闇を背景にして豪速ですれ違っていく。
ワダツミから発射された幾筋もの青いビームの先端が、セラフィムの船体、右舷前方のシールドを直撃し弾けるように四散した瞬間、その銀色の巨大な船体が、左舷に振られるようにして大きく揺れたのだった。
「きゃぁっ!」
ブリッジの女性オペレーター達が短い悲鳴を上げ、座席から振り落とされそうになって、危うくコンソールパネルにしがみつく。
宇宙の暗黒に凄まじい紫色のプラズマが迸り、セラフィムの船体に、防御シールドとして散布されていた超気密電磁粒子が、度重なる高エネルギービーム被弾により、遂にその結合を崩壊させ、瞬く間に消失してしまう。
それは、敵の攻撃を防ぐ盾が、その役割を果たさなくなった、正にその瞬間であった。
だが、シールドを失ったされたのは、セラフィムだけでは決してない。
至近距離からの発砲を回避し切れなかったワダツミも、エネルギー出力を絞ったセラフィムの主砲をまともに浴びたがため、そのシールドを一瞬で失っていたのである。
だが、ショウゴ・二カイドウが指揮するワダツミは、推進出力を落すことなく、3500Sノットという高速でみるみるセラフィムとの距離を縮めていく。
 ソロモンもまた、セラフィムの推進出力を落さないばかりか、進路の変更すらしないまま、厳しい顔つきで有視界のワダツミを睨むように見つめすえたのだった。
 双方のブリッジには、けたたましい衝突回避警報が鳴り響いている。
 主砲発射体制を維持し、ダビデの星を掲げた銀色の大型戦闘空母と、鋼色の大型戦艦が、宇宙の狭間で相対した。
セラフィムのレーダー通信オペレーター、ナナミ・トキサカが、狼狽(うろた)えた顔つきで艦長席を振り返る。
「ワダツミとの距離・・・7658!このままでは衝突します!」
だが、ソロモンは、紅の瞳を僅かに細め、鋭利な声色で言うのだった。
「進路はそのままだ・・・・・・照準修正0.175、主砲、撃て!!」
ソロモンの声と共に、セラフィムの船体に16基搭載された平射三連主砲が、甲高い轟音を上げながら、出力を絞った赤いビームの閃光を容赦なくワダツミへと解き放つ。
時を同じに、ワダツミの四連主砲もまた、青い高エネルギービームを一斉にセラフィムへ向けて発射したのである。
暗黒の闇で再びすれ違っていく、赤と青の凄まじい閃光の帯。
急速に接近していく互いの船体。
双方のビーム先端が、ほぼ同時に双方の甲板へと到達する。
刹那、宇宙を揺るがすような大音響が響き渡ると、装甲板が破損され、主砲を被弾した双方の船体が、白煙を立ち昇らせながら大きく下方に沈み込んだのだった。


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