* 『全機、機体スキャン完了、エナジーバルブ接続解除、重力制御システムオールグリーン。カタパルト上昇します。各機フォーメーション・凵iデルタ)で待機してください。 ツァーデ小隊、出撃60秒前・・・・』
戦闘空母セラフィムの大型ドックに、ブリッジ・オペレーター、ナナミ・トキサカの声が響き渡る。 セラフィムの上部にある巨大な装甲ゲートがゆっくりと開き、宇宙空間戦闘用爆撃機レイバンを格納していたカタパルトが、甲高い警報音を上げながら上昇していく。 ワープシステムを搭載した高性能ステルス戦闘機であるレイバンは、予備機をあわせ、このセラフィムに約120機格納されている。 そのパイロット達は、ある一定の基準で選定された有能な若者達であり、中でも、このツァーデ小隊は、エース級のパイロットが在籍する精鋭部隊だった。 発進体制に入ったレイバンのコクピットで、ヘルメットシールド越しに渋い顔つきをしていた若きパイロット、リョータロウ・マキの耳に、いけ好かぬ上官の声が飛び込んで来て、彼は、ふと、その視線を通信モニターに向けたのである。 『リョータロウ、おまえは俺の援護に回ってくれ。ツァーデ小隊が出撃したら、その後でノキアが出る』 「何だよ、何であんたが出るんだよ?」 『因縁の対決ってやつだ。アダム≠乗せたシャトルを追うぞ。アダム≠フ傍には、タイプΦヴァルキリーがいる』 「タイプΦ?・・・くっそ、厄介だな・・・で、何であんたの援護が俺なんだよ?別にアーサーでもいいじゃねーか?」 上官に対する返答とは思えない言葉でそう答えると、リョータロウは、鋭利な黒曜石を思わせるその瞳を、ビーム砲と対戦艦ミサイルが飛びかう宇宙空間に向ける。 『トライト二アのヴァルキリー部隊と戦って、生き残ったパイロットはおまえだけだからな。今度は、美人のセクサノイドに見惚れて撃墜なんかされるなよ』 セラフィムの艦長、レムリアス・ソロモンのからかうようなその言葉に、リョータロウは、あからさまに不愉快そうな顔つきをすると、怒ったように吐き捨てるのだった。 「ふざけるな!あの時は・・・べ、別に見惚れてた訳じゃねーよ!」 『ツァーデ小隊、出撃10秒前、9、8、7、6、5・・・・』 レイバン各機のバー二アが、最大出力で青い炎を上げる。 『4、3、Maximum Fire Ready・・・GO!!』 その声と共に、凄まじい轟音を上げて、レイバン部隊ツァーデ小隊が、激しい戦火を吹き上げる広大な宇宙空間へと飛び出していった。
* 高性能ステルス戦闘機レイバンのダークブラックの機体が、宇宙空間に溶け込むようにして、ビーム砲と対戦艦ミサイルの飛び交う中を豪速で駆け抜けていく。 両翼に描かれた青い『ダビデの星』が、暗黒の闇で鋭利に映えた。 ツァーデ小隊10機のうちの1機、リョータロウ・マキが搭乗する機体が、その編隊を離れ、ラボ・コロニー『スペーシア』の左舷に向かって急速に進路を変えていく。 リョウータロウの機体であるT−5以外のツァーデ小隊は、コロニーの中枢(コア)を破壊するため、隔壁を突破して内部に強行突入するはずだ。 ツァーデ小隊のレイバンには、他のレイバンには搭載されていない、装甲隔壁破壊用高エネルギーレーザー砲、俗にソドムシンク砲と呼ばれる強力な火器が機体下部に装備されている。 それは、敵コロニーや大型戦艦をより迅速に撃沈させるため、ガーディアンエンジェルが独自に開発した、まだ研究途中の兵器であった。 レイバンの母艦であるセラフィムにもまた、それを大型化した砲門が一基だけ搭載されているが、エネルギーチャージをする際に、全ての動力をそこに回さなければならず、一時的に戦闘不能になるため、よほどのことが無い限り使用されることはなかった。 レイバンに搭載されているのは、かなり小型化されたソドムシンク砲であるが、それでも、膨大なエネルギーを消費するので、一回の充填につき一度しか使用することができないという欠点がある。 それを除けば、多大な攻撃力を持つ兵器であり、それで隔壁を破り、直接内部を爆撃して一気に手強い敵艦を沈めるというのが、現在の上等戦法だった。 だがその戦法は、迅速且つ正確に遂行し、素早くその場を退避しなければ、即、死に直結する危険な技である、だからこそ、精鋭部隊であるこのツァーデ小隊が任務遂行に当っているのだ。 特殊ガラスで覆われた風防の向こう側で、徐々に傾いていくスペーシアを肉眼で確認すると、リョータロウは、レーダーに映し出されるシャトルを追って操縦桿を左に倒したのである。 その時、後方から高速で近づいてくる一機の機影がレーダーに映り込んだ。 個体識別信号は味方のものだ。 それも、レイバン・ノキアと称される武装強化型の指揮官機。 間違いなく、セラフィムの艦長レムリアス・ソロモンの機体である。 通信回線が開き、T―5の隣に並んだノキアから、ソロモンは冷静な声色で言う。 『ワープインする前に追いつくぞ。リョータロウ、ヴァルキリーには気をつけろよ。相手は、ケルヴィムを墜した強敵だ』 「言われなくてもわかってるよ!」 そっけなくそう答えて、リョータロウは、眉間にしわをよせながら、ブーストコントローラーを更に強く踏んだ。 凄まじい対空砲火の中を、2機のレイバンが、速度を上げて駆け抜けていく。 ハデスの番人≠ニ呼ばれるソロモンが、戦場のサファイア≠ニ称した美しいヴァルキリーとの交戦は、もうまもなくである。
* スペーシアから切り離された脱出シャトルが、急速に戦線を離脱していく。 WXと呼ばれる少年は、美しいセクサノイド012のしなやかな腰に抱き付いたまま、その大きな黒い瞳で、白煙とビーム砲の閃光が飛び交う宇宙空間を、実に不安気な面持ちで見つめやっていた。 「012・・・みんな、死んじゃうの?」 震える声で弱々しくそう聞いてきた少年を、宝石のような人口眼球で顧みると、012は、切な気な表情をしながら、挿し伸ばした掌でそっと柔らかなその黒髪を撫でたのである。 何をも答えることなく、彼女は、コンソールパネルを指先で叩き、ワープアウト座標を設定した。 このシャトルは、現在、自動操縦モードになっている、座標さえ設定してしまえば、コクピットに出向かなくても、惑星トライトニアまで航行可能なはずだ。 綺麗な眉を厳しく寄せて、012が、その視線を大きな窓の向こう側に向けた時だった。 突然、シャトル全体が小刻みに振動し、窓辺の宇宙空間から、戦闘機と思しき黒い機影が二機、急速に接近してきたのだった。 彼女の優れた視覚センサーでは確認できるが、シャトルのレーダーには全く反応しない。 相手は、スレテルス機だ。 二機の敵機のうち一機が、まるで、挑発でもしているかのように、シャトルの隔壁ぎりぎりのところを、ロールしながら豪速で横切っていく。 その一瞬で、三層構造になっている特殊ガラスの一番外側が、破裂音を上げて粉々に砕け散った。 012の視覚センサーは、ダークブラックの両翼に描かれた青い六芒星のエンブレムを決して見逃さない。 「ガーディアンエンジェル・・・・っ」 苦々しくそう呟いて、012は、その美しい顔を凛と強い表情で引き締めると、静かに腰を落とし、宝石のようなブルーの人口眼球で、真っ直ぐに、WXの黒い瞳を見つめ据えたのである。 「WX・・・・・・テロリストに見つかったようです、ここで待っていてください」 「どこに行くの!?012!?僕を一人にしないで!!」 少年は、黒い髪を振り乱して大きく首を横に振ると、澄んだ瞳に一杯の涙を貯めて、012の首にぎゅっとしがみついた。 「彼等は、あなたを殺しません・・・でも、このままでは、あなたは彼等に連れ去られてしまう。それを阻止するのが、私の役目です。直ぐに戻ってきますから、待っていてください・・・あなたは男の子です、強い子のはずです・・・我慢、できますね?」 012は、少年の華奢な体を両腕で抱き締めながら、落着き払った優しい口調でそう呟いた。 人間の女性となんら変わらない、柔らかく暖かなその両腕を握り、少年は、星屑のような涙をポロポロと頬に零しながら、弱々しく頷いたのである。 「戻ってきてくれるんでしょ?ずっと傍にいてくれるんでしょ?前に、そう約束したよね?僕を一人にしないって・・・012、そう言ったよね?」 「はい・・・約束は守ります。安心してください」 綺麗な唇が、いつものように優しく少年に微笑みかける。 少年は、片手で涙を拭って、もう一度小さく頷いたのだった。 それを確認すると、012はゆっくりと立ち上がり、くるりと彼に背中を向け、美しい髪を揺らしながら、ドアの向こう側に消えて行ったのである。 そんな彼女の後姿を見送って、少年は、愛らしい顔を不安気に歪め、華奢な肩で激しく嗚咽した。 まだ幼い少年である彼が、真実の強さと勇気を手に入れるのは、まだ、少し先の話だ。
* 『おい!何やってんだよあんた!?ハルカに何かあったらどうすんだよ!?』 ひどく憤慨したリョータロウの声が通信回線から聞こえてきて、ソロモンは、ヘルメットシールドの下で愉快そうに一笑した 左翼のバーニアを瞬時に噴射して機体をターンさせながら、ハデスの番人≠ニ呼ばれる青年は、悪びれもせず答えて言うのである。 「大丈夫だ、外窓が割れたぐらいじゃ、内部の空気は抜けないさ」 特殊ガラスで囲まれた風防の向こう側で、激しい爆音と白煙を上げながら、ラボ・コロニー『スペーシア』の隔壁が吹き飛んでいく。 どうやら、ツァーデ小隊が、コロニー内部に突入したようだ。 紅の瞳でちらりとその様子を顧みて、ソロモンは、端整な顔を実に冷静な表情に満たすと、落着き払った口調で言葉を続ける。 「リョータロウ、磁気レーザー射出準備。動力部だけを破壊して、シャトルごとセラフィムへ牽引する」 『イエッサー』 通信回線の向こう側で、不愉快そうにリョータロウが応答した時、レイバン・ノキアの通信回線に、セラフィムのブリッジ・オペレーター、ルツ・エーラの声が割り込んできたのだった。 『艦長、ファイヤーウォールが固すぎてハッキングできません。どうしますか?このまま続けますか?』 モニターに映るルツの神妙な顔を見やって、ソロモンは沈着な声色で答えて言う。 「やはり無理か・・・まぁいい、中断してくれ。ツァーデ小隊が任務を完了させたら、爆発が来る前に、セラフィムは戦線を全速離脱する」 『イエッサー!』 ルツの刻みの良い声と共に、セラフィムからの通信が遮断されると、ソロモンは、再びリョータロウに向かって言うのだった。 「そういうことだリョータロウ、時間がない、急げ」 『言われなくても!!』 リョータロウがそう答えるなり、T―5のバーニアが青い火を噴いて、一気にその機体をシャトルへと傾けていく。 レイバン・ノキアの機体が、シャトルの後部を捉えたその次の瞬間だった、眼前のレーダーレンジに、高エネルギー熱源の接近を知らせるカーソルがたたましく点滅したのである。 「来たな・・・」 ヘルメットシールドの下で、ソロモンは、紅の瞳を鋭利に細めた。 急速にこちらに近づいてくる、流星のような青い光の帯。 肉眼でもはっきりと捉えることができるそれを、彼は、つい一年程前にも見たことがあった。 高速戦艦ケルヴィムから、アダム≠奪っていったのは、他でもない、TR−0185型、タイプΦ(ファイ)戦闘用ヴァルキリー、識別コード012。 ソロモン自身が、戦場のサファイア≠ニ称したあの女性体セクサノイドだ。 一年ぶりに、彼女がその姿を現そうとしている。 たった一機で、当時、ソロモンが指揮していたケルヴィムを撃沈させた、あの美しい人型兵器が。 敵機の急接近を知らせる警報が、レイバン・ノキアのコクピットに鳴り響いた。 「リョータロウ、シャトルを頼む。ヴァルキリーは、俺が相手をする」 『クラッシャーブレードには注意しろよ、気付いた時には脳天直撃ってパターンだからな!』 「大丈夫だ。おまえと同じで、俺も一度食らった」 『・・・イエッサー』 リョータロウとの通信回線が遮断された瞬間、レイバン・ノキアの右舷前方に、宇宙空間を二分するような高エネルギービームの閃光が迸ったのである。 ノキアのバーニアが青い火を吹き、軽くロールした機体を掠めるようにして、青い閃光が豪速で通り過ぎていく。 有視界では確認できないが、レーダーレンジのカーソルはひっきりなしに点滅し、近距離に敵機がいること示す警報も鳴り止むことはない。 ノキアのモニターに、敵機の情報を詳細に表示するウィンドウが次々と開いていく。 暗黒の空間に青き光芒が走った。 風防に映し出された照準レンジが敵機を捕捉すると、ノキアの後部に搭載されたミサイルポットから、16基のレーダー誘導ミサイルが、轟音と白煙を上げて宇宙空間に発射される。 モニター上を俊足で移動する敵機に向かって、緩やかな曲線を描く正確な軌道は、確実にその機体を捕捉しているはずだった。 だが、その視界の右端に青い瞬きが出現すると、次の刹那、凄まじい爆音を上げて全てのミサイルが大破したのである。 同時に、暗黒の宇宙空間に上った白煙の隙間から、闇を二分するようにして高エネルギービームが連射されたのだった。 熱源探知センサーにも、レーダーにも反応しない、ステルス機であるノキアの位置を、相手は確実に捕捉しているようだ。 迅速で左舷に移動しながら機体を360度ロールさせ、ビーム砲をかわしたノキアの元へ、今度は、青き流星のような光芒が急速接近してくる。 それが、惑星トライトニアが誇る高機能セクサノイドを操縦ユニットにした、アーマード・バトラーと呼ばれる人型機甲兵器であることを、ソロモンが知らない筈がない。 ヘルメットシールドの下で、鋭利に閃く紅の両眼が、そのメタリックブルーの機体を風防越しに捉えた。 急旋回するノキアの下方から、突き抜けるようにして現われたアーマード・バトラー『アルヴィルダ』が、右腕に装着された対装甲レーザーブレード、俗にクラッシャーブレード呼ばれる熱線の刃を、間髪入れずに横に振るう。 ノキアのメインバーニアが激しい炎を吹き、ピッチアップした機体の後方下部すれすれを、戦艦の装甲隔壁すら貫く三日月型の閃光が、流星の如く行き過ぎていった。 急上昇するノキアのモニターには、特殊ガラスの風防で覆われた『アルヴィルダ』のコクピットが鮮明に映し出され、そこに搭乗する、サファイアのような青い髪を持つ美しい女性体セクサノイドの姿が、はっきりと見ることができる。 さほど大きくないアーマード・バトラーのコクピットにあって、その全身に取り付けられた赤外線ケーブルが、彼女が、タイプΦヴァルキリーと言われる、優れた戦闘能力を有するセクサノイドであることを明白に物語っていた。 間違いない。 一年前、高速戦艦ケルヴィムからアダム≠連れ去った、あのセクサノイドだ。 ソロモンが、紅の瞳を鋭利に細めた瞬間、『アルヴィルダ』の両肩に搭載された、ミサイル発射ユニットが白煙を吹き上げ、10基のミサイルが豪速で射出される。 ほぼ同時に、ノキアから発射された16基のミサイルがその全てを大破させ、旋回してピッチダウンした機体が、クラッシャーブレードを構えた『アルヴィルダ』へと高速接近していく。 ノキアの両翼に装備されたビームガドリングが『アルヴィルダ』のコクピットに向くと、風防に表示された照準レンジがロックオンを示し、その砲門から無数の閃光銃弾が連射される。 だが、『アルヴィルダ』が振りかざしたクラッシャーブレードがシールドとなり、光の弾丸を一瞬にして無力化させてしまう。 とたん、『アルヴィルダ』メインバーニアが炎を上げ、メタリックブルーの人型機体が、その機動力を駆使し、急旋回するノキアの前方に一瞬で踊り出たのだった。 振りかざされたクラッシャーブレードが、暗黒の宇宙空間に三日月型の閃光を描き、ノキアの上限から流星の速度で飛来する。 リョータロウが、『気付いた時には脳天直撃』と言っていたのは、正にこの事だ。 苦々しく眉間を寄せたソロモンの足先が、ブーストコントローラーを踏むと、点火された補助バーニアが火を吹いた。 機体をロールさせながら、右舷に急速旋回したノキアの左翼を、熱線の青い刃が僅かに掠めた。 その衝撃で、機体が大きく横に振られる。 弾き飛ばされる寸前で逆噴射をかけ、体制を立て直したノキアの左舷から、間髪入れずに二撃目が来る。 宇宙空間での機動力は、戦闘機タイプより人型タイプの機甲兵器の方が明らかに上だ。 「流石に、簡単には墜ちないか」 ソロモンは、対戦艦ミサイルのロックを解除し、やけに冷静な顔つきでそう呟きながら、迅速で操縦桿を倒した。 急旋回したノキアの右舷を、青い帯を引く熱線の刃が、流星の速度で通り過ぎる。 クラッシャーブレードをロールしながら退け、機首を下げたノキアが、最大出力で『アルヴィルダ』に接近していく。 膨大な破壊力を持つ対戦艦ミサイルを使うなら、『アルヴィルダ』を、アダム≠乗せたシャトルから遠ざけねばならない。 もしそれが『アルヴィルダ』を被弾させれば、この距離だ、その爆発は確実にシャトルにまで及ぶ。 「リョータロウ、守備はどうだ?」 『アルヴィルダ』から発射された10基のミサイルを、ビームガドリングで的確に撃ち落としながら、ソロモンは、落着き払った声色で、通信回線の向こうにいるリョータロウに言った。 大破したミサイルが吹き上げる白煙を切り裂くようにして、両翼にダビデの星を掲げたダークブラックの機体が、豪速で『アルヴィルダ』へと迫っていく。 『磁気レーザー射出完了、守備はオールグリーン』 リョータロウからの返答と共に、けたたましい警報音がノキアのコクピットに響き渡り、モニターに表示された『アルヴィルダ』との距離はみるみる狭まっていった。 「本宙域を急速離脱。急げ、もう時間がない」 『イエッサー』 珍しく刻みの良いリョータロウの返事と同時に、ノキアのレーダー誘導ミサイルが、この近距離から轟音を上げて発射される。 白煙を吹き上げ、宇宙空間を豪速で駈ける16基のミサイルが、緩やかな曲線を描きながら、今度こそ確実に『アルヴィルダ』の機体を捉えたのだった。 シールド展開した『アルヴィルダ』が、流星の速度で左舷に移動した瞬間、その機体に爆音と白煙を上げながら次々とミサイルが着弾する。 急上昇したノキアの有視界で、白煙に包まれた『アルヴィルダ』が、左腕を失って後方へと弾き飛ばされていった。 しかし。 それは、決して致命傷にはならなかったようだ。 逆噴射をかけた『アルヴィルダ』が、青く揺れるクラッシャーブレードを瞬時に掲げ、青い光芒を引きながら凄まじい速度でノキアに接近してくる。 敵機の急接近を知らせる警報が響き、最大出力でその場を離脱するノキアの機体を、流星の如き『アルヴィルダ』が追走する。 レーダーの中で、シャトルを牽引するT―5が、その宙域を抜けたことを確認すると、ソロモンは、端整な唇で軽く微笑した。 補助バーニアが青い炎を吹き上げ、突然旋回したノキアの機体が、真正面から『アルヴィルダ』を捉える。 クラッシャーブレードを振り上げた『アルヴィルダ』をモニターで捉えながら、ソロモンは、対戦艦ミサイルの発射ボタンに手を掛けた。 その次の瞬間だった。
『012―――――――・・・っ!僕を一人にしないで――――――っ!! 012を殺さないで――――――――っ!!殺さないで――――――――っ!!』
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