未来面接官
さて、これから最終面接を始めます。ああ、どうかそんなに緊張なさらないでリラックスして下さい。何せ質問はたった一つですから。
はい。
それでは始めます。もしあなたがたった一つだけ、願い事を叶えられるとしたら、あなたは何を望みますか?
何でもいいんですか?
はい。一つだけなら、何だって構いません。
では、その願いを叶えてくれる何かの望みを叶えます。
それはどういう事ですか?
例えばその願いを叶えてくれるものが天使なら、その天使の願い事を叶えてあげるということです。
ではその願いを叶えてくれる何かが天使だとしましょう。 あなたは何故自分のではなく天使の願い事を叶えてあげるのですか?
理由は主に二つあります。 一つは、好奇心です。願い事を叶えるほどの力を持った者が、何を望んでいるのか気になるからです。 二つ目は、優越感ですね。自分は願い事を叶える力を持った者の、願いを叶えることができるのだという。
なるほど。ではもし、その天使が世界滅亡を望んだらどうしますか?
それは悲しいですね。でも止めたりはしません。 そんな超越的な力を持った者がそんなことを望むのなら、この世界は幸先が無いということに近いのでしょうから。
では、天使が自分自身の願い事を叶えることはできないと言ったらどうしますか?
願いを叶える力を持つ者の願いを叶えることは不可能ということですね?
はい、そうです。
それなら、願いを叶える力を無くしてもらいます。
それはどうしてですか?
自分自身の願いを叶えられないということはつまり、どんなに超越的な力を持つ者でも最終的には、自分の望みは自分で行動しないと叶えられないということを指していると思うからです。 それなら、願いを叶える力なんて必要ないと考えました。
なるほど、よく分かりました。 これで面接を含む全ての試験は終了です。お疲れ様でした。
ありがとうございました。
ドアが静かに閉まった後、機械的な音が部屋をしばらく響かせた。そして音が止むと、無機質で抑揚のない言葉で自動人形は言った。
今までも様々な答えがあったが、こんな例は無かった。これはまた次元の違う回答なのかもしれない。
自動人形は呻るような鈍い音を発し、相手への通信を手繰り寄せた。 その向こうに通じるのは、抑揚ある声を持つ彼の創造主。
end.
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