私たちの音楽は、いつまでも永遠に響き渡ると思っていた。
小さなライブハウスの真ん中のステージに立って、私の声が、彼のギターが、みんなの心の中に響いていく。 ここでは私はSAYOと名乗って、どこまでも声が届くように歌う。 隣でKIRITOは、私の歌声の道筋を作るようにギターを奏でる。
それは2人だけのステージ。 カラフルな光の演出は、私たちには似合わない。 私たちは、決して光に照らされない存在。
新月。 月が地球の裏側に隠れて、一晩中、月が昇らない、本当に漆黒の夜。 その夜にだけ、私たちはこのライブハウスで音を奏でる。 見えないからこそ、見えるものがある。 見えないからこそ、光り輝くものがある。 見えないからこそ、私たちの音楽は響き渡る。 みんなの心の中に、永遠に響き渡る。
でも、 やがて夜が明けるように、 やがて月が満ちていくように、 やっぱり永遠なんてものはないし、あってはいけないと思った。 ある日のライブのときに、高校の制服を着た女の子からこう言われたときに、やっと気づいた。
「どうしてあなたたちは、ここで歌い続けているの?ここでずっと、歌い続けていくつもりなの?」
私たちの名前は、noom(ノーム)。 月の無い夜、霧が立ちこめるこの街で、 私たちの音楽は、いつまでも永遠に響き渡ると思っていた。
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