そして27億年前にはシアノバクテリアが大量に発生しました。
何故それが分かるのかといえば、27億年前の地層からストロマトライトと呼ばれるシア ノバクテリアの化石が大量に見つかったからです。
このストロマトライトの形状は直径が数十cmでマッシュルームに似た形をしています。
それでは新幹線路線でこの27億年前に相当する地点を特定してみましょう。
そこは東京駅から689.6q離れた所で、上り新幹線列車が岡山駅を出て10分ほど走った所 になります。
距離で表すと岡山駅から43.4km東京寄りの所となります。
さて、大量に発生したシアノバクテリアによって作り出された酸素ですが、それまで原 始の海の中で生息していた生物たちにとっては大変な脅威となったことでしょう。
その頃、原始の海の中でどのような生物がどのような状態で生息していたのかはよく分 かっていません。
顧みれば人類の祖先と思しき生物が地球上に登場したのは2000万年前といわれています。
そう、私たちの先祖と思しき生物が地球上に現れてからまだ2000万年しか経っていない のです。
しかし、酸素が爆発的に増加したのは始生代に入ってから13億年が経過したときです。
我々人類にとっては、とてつもなく長い2000万年という時間も13億年という時間に比べ た場合はわずかに1/65でしかありません。
そのこと一つを捉えて見ても、その頃地球上に生息していたであろう生物の種とそれぞ れの種の個体数は今の生物の種とそれぞれの個体数よりもはるかに多かったのではない か、と思わざるを得ません。
つまり当時の地球とは、酸素がない環境で生息する生物たちのパラダイスであったので はないでしょうか。
しかし、そのような酸素がない環境で暮らしていた生物たちにとっては、地球上に新し く登場した酸素はそれこそ毒ガスと同じようなものです。
その為、当時生息していた生物のほとんどは原始の海の中に酸素が行き渡った時に死に 絶えたと考えられています。
そして、仮にそれが事実であったならば、それは地球史上で最大の生物の絶滅であった 筈です。
一方でシアノバクテリアによって作り出された酸素は海中の鉄イオンと結合して海底に 沈んでいきました。
このシアノバクテリアによる光合成は季節により酸素の放出量が異なっていました。
その為、酸素の放出量が多い時は鉄分を多く含んだ層となり、反対に少ない時は酸素を 放出した微生物などの死骸を含んだ普通の層(黒色頁岩)となり、交互に幾重にも積み 重なっていきました。
それにより形成された地層は縞(しま)状になりました。
その為、この地層は縞状鉄鉱層と呼ばれています。
オーストラリア西部のピルバラクラトンには世界最大の縞状鉄鉱層を見ることができます。
ところで、ご承知のように鉄は酸素と反応すると酸化して赤く錆びてしまいます。
ですから当時の海水は今とは違って赤い色をしていたのではないかと考えられています。
現代文明になくてはならない鉄の素となる鉄鉱石はこうしたプロセスを経て生まれました。
また、よく言われることですが、気体はそれだけで化石になることはありません。
それ故、この縞状鉄鉱層は「酸素の化石」と呼ばれることもあります。
今、世界には幾つもの鉄鉱石の産地がありますが、前出のことからも分かるようにそれ らの産地は大昔は海の底であって、その後の地球の造山運動で隆起した所です。
そして、この縞状鉄鉱層は19億年前まで作られ続けました。
何故それ以降は作られなかったのかといえば、海中にあった鉄イオンは酸化し尽し、既に、 ほとんどが縞状鉄鉱層に変化してしまったからです。
ところで19億年前に相当する場所は東京駅から485.3qの所となります。
そこは上り新幹線列車が京都駅を出て6分少々走った所で、京都駅から28.4km東京寄り の所です。
では縞状鉄鉱層が形成された27億年前から19億年前を新幹線路線で整理して表してみま しょう。
それは前出の如く、東京駅から見た場合、岡山駅まであと約10分の所689.6qの所から、 京都駅まであと約6分の485.3qの所までに相当する204.3qの区間となります。
それと同じ距離を実際の新幹線「のぞみ」は約50分で走ります。
現代文明を支える鉄鉱石の素はこのように長い時間をかけて作られたのです。
そういえば、いつの間にか時代は原生代に進んでいました。
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