少し遠慮気味にドアを閉めイスに腰を下ろした。 「よし、」そう心で言ったのを読み取ったタイミングで妻がいう。 「また、思い出ルームなの。時間遊びもいいけど、仕事はちゃんとやってよ。」 「当たり前だろう。でももう何日もやることがないし、・・」と用意しておいた 言い訳を並べようとしたのを「ハイハイ」と子供なみにあやし、 「年賀状がきてるよ。」からかうようにひらひらさせながら葉書をさしだす。
ここへ来てからもう5年、毎年届くのが、今年は遅いなと思っていた。 今年の絵は、淡い青の地に少しづつ色調を変えた黄色の点々。空に舞う菜の花。 去年はこげ茶と濃い緑の松ぼっくり、その前は・・・、思い出そうとする耳に、 「今時ここまで葉書って、その、ちっちゃって人どんなお金持ちなの。」 おっ、新しいパターンだな。とりあえず無視しよう。 「差出し場所、今年も又違うわね。何してるんだろう。」 「さあなあ。」去年と同じパターンだ。「幾つぐらいのひと?」 またこれも去年と同じだ。「去年も言っただろ、同い年だって。」
「ネット新聞に出てたんだけどね。」 抜いたな、伝家の宝刀、話は変わります技。 「アルビノて知ってる?」多分あの事だろうが「さあー、なんだろ。」 で受け流す。万が一違っていたら「すぅぐ知ったか振りするんだからぁ。」だ。 「色素欠乏症のことなんだって。覚えてる? 小さい時お屋敷の堀で大きな白いオタマジャクシ捕まえたでしょ。 私がぷにゅぶにゅしてるって言ったら大笑いしてたよね。でも書いてあるでしょ。 正常な個体よりはるかに柔らかくぷにゅぶにゅした触感だって。」 プリントアウトした記事をこちらに滑らせる。
意識してゆっくり手に取り、付き合いで読んでいるいるんだからな、 を強調するように首を回したりしながらざっと目を通す。
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