君は本当に変わった人です。 好奇心旺盛で、いつでも子猫のような瞳をクリクリさせて、興味のままに突き進むステキな女性です。
クロスワードパズル。 水泳。 花柄のワンピース。 ミステリー小説。 水族館。 浅漬け作り。 ギリシャ文明。 本格的なコーヒー。 心霊写真。 野鳥の観察。 限定発売のスナック菓子。 古い外国映画。 甲子園。 レース編み。 スポーツカー。
出会ってから2回春が来る間に、君の好きなものはこんなにも変わりました。 種類がバラバラで、次に何を好きになるのか僕なんかには想像もつかなかった。 200キロも離れた所にあるサービスエリア限定のチョコレート菓子を買うためだけに車を飛ばした子が、次の週末にはお菓子のことなんかすっかり忘れて、アラン・ドロンについて語り出すなんて、どこの誰が予想出来ると思う? まったく飽きっぽいな、今度のはいつまで続くかな、なんて意地悪を言うと、君は決まってこう抗議します。
「飽きたわけじゃない。好きなものがひとつ増えたの」 その時のお澄まし顔がとても可愛らしいものだから、ついつい何度も意地悪を言ってしまいます。ごめんね。
僕の、狭いアパートを見渡せば、君の好きなものたちがいます。 この前くれた手編みのコースターは、結局壁にピンで留めました。『ギリシャ、青い空と永遠の美』展に行った時に記念に買ったパルテノン神殿の絵はがきの隣です。 君とあちこち出かけて沢山写真を撮ったから、壁は賑やかです。水族館のマンボウと一緒に撮ったやつや甲子園のスタンドで汗まみれになっているやつもなかなか良いけれど、ピクニックの時の写真が、一番のお気に入りです。花柄のワンピースを着た君がにっこり笑っています。君が「心霊写真みたいな写真をついに撮れるようになった」と自慢気にくれた写真も、もちろん気に入っているよ。 テレビの下には『ローマの休日』のDVD。 枕元には横溝正史の小説とスポーツカーのカタログ。 冷蔵庫の上にはコーヒー豆とドリッパーと、浅漬けをお裾分けしてくれた時の空き瓶が仲良く並んでいます。浅漬け美味かった。また作ってね。 ヒヨドリの鳴き声が聞き分けられるのは僕の密かな自慢です。コンビニに寄って「限定」の字がおどる菓子を見つけると君と食べようとおもってつい買ってしまいます。雑誌にクロスワードパズルが載っていると君と解こうと思って切り抜く癖がつきました。
君が好きなものは僕も好きです。
君のことが大好きです。 よく笑って、辛い出来事も笑い飛ばして、誰にでも親切で、いつでも一生懸命で、君は最高です。
時々、君はふと寂しそうな顔をするけれど、僕はまだその理由を知りません。 君にそんな顔をさせないことが、当面の僕の目標です。 やっと社会人らしくなってきた僕はまだ少しばかり頼りないと思いますが、すぐに強くて大きな男になって君の抱えている寂しさごと包み込んで、守りたい。
こんな照れくさいこと口では言えないから、手紙を書きました。 僕の決意表明です。 僕は、この先ずっと君と生きていくと決めています。
遠くない将来、僕は君にプロポーズします。
君が、うん、と言ってくれるような男になります。 必ずなります。 待っていてください。
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