いつものようにお母さんとあいつのダンスが始まった時、 ぼくのお気に入りのクマさんの靴下が片方無くなった。 お母さんに聞いたけど知らん顔。 ぼくは怒って、おもちゃの車を、あいつに思いっきりぶつけた。 「ゴンッ」と大きな音がした。 するとブー、プス、プス。 「あら、壊れちゃったかな」 お母さんはあいつの長い鼻をカチャカチャ。 「あっくん。車なんか投げちゃだめでしょ」 あいつは何も言わなくなった。 ぼくは怖くて大声で泣き出した。 「ごめんなさい。ごめんなさい」 「もう、泣かないの。大丈夫よ。電気屋さんに見てもらうから」 ぼくはあいつに駆け寄りツルツルの丸っこい体をナデナデした。 「ごめんね。ごめんね。意地悪して」 次の日、電気屋さんが来てくれた。 いつもお世話になっているおじさんだ。 おじさんはあいつの長い鼻を引っこ抜き、ガサゴサ。 「これ、ぼくの靴下だよね?」 笑いながらクマさん靴下をあいつの鼻から取り出した。 「あら、いやだ。気がつかなかったわ」 お母さんは真っ赤になってそう言った。 おじさんがあいつの鼻をカチャカチャ。 ブーブーブー。 元気な音を出した。 もう、大きらいだなんて言わないよ。
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