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作品名:オーガストとメイ 作者:ハンス

第7回   7
第五場 学校の廊下。


 担任教師、教師A、歩きながら登場。


担任教師:まったく困ったもんです。
教師A:何が。
担任教師:うちのオーガスト君です。
教師A:ああ、彼。
担任教師:今日久々に学校に現れました。・・・どうすればいいか困りますよ。
教師A:彼はねえ、確かに扱いにくいよ。がつんと言ってやりましたか。
担任教師:まさか。どうせ言い負かされるだけですから。
教師A:最近の子どもは生意気です。口だけは達者だ。
    オーガストなど、その典型ですよ。
    いつか私も、きつく言ってやるつもりです。
担任教師:「生意気の一言で僕を片付ける気ですか。」
教師A:はい?
担任教師:「おお、哀れな人よ。
     あなたは自分の小さな物差しで計りきれない人間を、
     すべて『生意気』の一言で片付けるつもりか。」
教師A:彼が言ったのですか。
担任教師:ええ。
     どう思います。
教師A:どうもこうも、実に腹立たしいですな。
    完全に大人をなめとる。
担任教師:・・・・。
教師A:・・・・。
担任教師:どうなんでしょう。
教師A:何が。
担任教師:彼の言うことは、悔しいが、みんな筋が通っている。
教師A:屁理屈なら幼稚園児だって言える。
担任教師:でも私たちは、結局、彼を言い負かすことはできません。
教師A:でもねえ。
担任教師:確かに「生意気」のひとことで片付けてしまうのは楽です。
     だけど、「見下すのも崇めるのも容易いが、向き合うのは難しい」というでしょう。
教師A:・・・・・。
担任教師:私たちは彼と向き合っているのでしょうか。
教師A:先生、私たちは正しいことを言ってやっているだけです。
    彼は自分の減らず口に思い上がって、完全に大人を馬鹿にしています。
担任教師:ええ。
教師A:そんなことをしていれば、必ず将来痛い目をみます。
    我々教師は、彼がそれを避けることができるよう、
    年長者として、しっかり導いてやならくてはなりません。
    それが我々の義務というもんです。
担任教師:そうですね。
教師A:礼儀は大切です。
    社会では、人を敬う心がなくてはやっていけない。
    我々は彼にそれを教えてやらなくてはいけないのです。
担任教師:わかりました。それじゃあ、頼みますよ。
     今度彼にがつんと言ってやってください。
教師A:いいでしょう。時間があればね。
担任教師:・・・・・(時間があれば、か。・・・まったく)。

 ふたり、退場。


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