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作品名:オーガストとメイ 作者:ハンス

第5回   第二幕  第三場
第三場 メイの病室。


 メイ、ベッドの上で壁にもたれかかり、横の窓から外を眺めている。
 何を想っているのだろう?
 
 メイの母親、登場。


メイの母親:どう、調子は。
メイ:普通よ。
メイの母親:早く治して頂戴ね。ほら、りんごを買ってきたのよ。

 メイの母親、りんごをむき始める。

メイ:ありがとう・・。
メイの母親:元気ないわねえ。
メイ:だから入院してるんじゃない。
メイの母親:威張らないで頂戴。そんな顔してると、もっとひどくなるわよ。
      早く元気になってもらわないと困るんだから。
メイ:・・・・。
メイの母親:何?
メイ:・・どうして。
メイの母親:何が。
メイ:どうして、元気になってもらわないと困るの。
メイの母親:そりゃあ、あんたには学校もあるし、ピアノのお稽古だって・・。
メイ:だから困るの?
メイの母親:あんたのことも心配だし。
メイ:本当?
メイの母親:どうしちゃったの。
メイ:・・・・・。
メイの母親:ねえ。
メイ:なんでもない。
メイの母親:変な子。

 病室のドアが開き、クアトロ登場。

クアトロ:メイ!
メイ:クアトロ先輩。
クアトロ:[メイの母親に]あ、こんにちは。
メイの母親:こんにちは。
クアトロ:[メイに駆け寄って]喘息なんだってね。
最近見ないから、君のクラスの子に聞いてみたら、入院してるっていうじゃないか 
メイ:ええ。
クアトロ:心配したよ。
メイ:・・・・・・。
クアトロ:・・・・・・。
メイの母親:[メイに向かって]それじゃあメイ、
      お母さん、夕飯の支度しなくちゃいけないから、そろそろ帰るわね。
      [クアトロに]クアトロさん?失礼するわね。
クアトロ:こちらこそ。突然すみません。
メイの母親:いいのよ。それじゃ、ごゆっくり。

メイの母親、退場。
       
クアトロ:・・・あちゃあ、って感じだな。
メイ:何が。
クアトロ:いや、俺のことどう思ったんだろうって。
メイ:?
クアトロ:恋人とでも思われただろうか。
メイ:まさか。
クアトロ:まあかまわないけどな。

 クアトロ、メイのベッドの上に腰掛ける。

メイ:心配してくれたんですか。
クアトロ:当たり前だよ。心配しないわけがないじゃないか。
メイ:悪いですね、何だか。
クアトロ:どうして悪く思う。君のために心配したんじゃないぜ。
     俺が勝手に心配しただけだ。
メイ:・・・。
クアトロ:どうなんだい調子は。
メイ:そんなにひどいわけじゃないの。夜になると咳き込むだけ。
クアトロ:早く治ったらいいねえ。
メイ:ええ。
クアトロ:や、間違えた。「治ったらいいなあ」、だ。
メイ:そんな。
クアトロ:ふふ、照れるなよ。
メイ:・・・・。
クアトロ:実はね、今日ここに来たのにはもうひとつ訳があるんだ。
メイ:?
クアトロ:これを見てくれ。

 クアトロ、絵画コンクールのチラシを渡す。

メイ:「学生反戦絵画コンクール」・・。
クアトロ:聞いたことあるかい。
メイ:ええ。応募するんですか。
クアトロ:そう。去年は銅賞だった。
メイ:銅賞!
クアトロ:本当に悔しかった。絶対に金を獲れたと思っていたから。
メイ:へえ。
クアトロ:今年はリベンジというわけ。
メイ:そう。
クアトロ:何、去年は何の下調べもなしに応募したが、今年はあらゆることを調べた。
     確実に獲れる自信があるんだ。
メイ:すごいですねえ。
クアトロ:それでだ。ありきたりだがね、もし俺が金を獲ることが出来たら・・。
メイ:?
クアトロ:俺と付き合わないか。
メイ:あら。
クアトロ:何かね、こう、目標があった方が頑張れるというか、そんな気がしてね。
メイ:・・・・・。
クアトロ:駄目かい。
メイ:・・・・・。
クアトロ:・・・・・。
メイ:・・・・本当に獲れるんですか。
クアトロ:もちろん。獲ってやる!
メイ:約束ですよ。
クアトロ:よし、燃えてきた!

 ふたり、笑い合う。


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