第三場 メイの病室。
メイ、ベッドの上で壁にもたれかかり、横の窓から外を眺めている。 何を想っているのだろう? メイの母親、登場。
メイの母親:どう、調子は。 メイ:普通よ。 メイの母親:早く治して頂戴ね。ほら、りんごを買ってきたのよ。
メイの母親、りんごをむき始める。
メイ:ありがとう・・。 メイの母親:元気ないわねえ。 メイ:だから入院してるんじゃない。 メイの母親:威張らないで頂戴。そんな顔してると、もっとひどくなるわよ。 早く元気になってもらわないと困るんだから。 メイ:・・・・。 メイの母親:何? メイ:・・どうして。 メイの母親:何が。 メイ:どうして、元気になってもらわないと困るの。 メイの母親:そりゃあ、あんたには学校もあるし、ピアノのお稽古だって・・。 メイ:だから困るの? メイの母親:あんたのことも心配だし。 メイ:本当? メイの母親:どうしちゃったの。 メイ:・・・・・。 メイの母親:ねえ。 メイ:なんでもない。 メイの母親:変な子。
病室のドアが開き、クアトロ登場。
クアトロ:メイ! メイ:クアトロ先輩。 クアトロ:[メイの母親に]あ、こんにちは。 メイの母親:こんにちは。 クアトロ:[メイに駆け寄って]喘息なんだってね。 最近見ないから、君のクラスの子に聞いてみたら、入院してるっていうじゃないか メイ:ええ。 クアトロ:心配したよ。 メイ:・・・・・・。 クアトロ:・・・・・・。 メイの母親:[メイに向かって]それじゃあメイ、 お母さん、夕飯の支度しなくちゃいけないから、そろそろ帰るわね。 [クアトロに]クアトロさん?失礼するわね。 クアトロ:こちらこそ。突然すみません。 メイの母親:いいのよ。それじゃ、ごゆっくり。
メイの母親、退場。 クアトロ:・・・あちゃあ、って感じだな。 メイ:何が。 クアトロ:いや、俺のことどう思ったんだろうって。 メイ:? クアトロ:恋人とでも思われただろうか。 メイ:まさか。 クアトロ:まあかまわないけどな。
クアトロ、メイのベッドの上に腰掛ける。
メイ:心配してくれたんですか。 クアトロ:当たり前だよ。心配しないわけがないじゃないか。 メイ:悪いですね、何だか。 クアトロ:どうして悪く思う。君のために心配したんじゃないぜ。 俺が勝手に心配しただけだ。 メイ:・・・。 クアトロ:どうなんだい調子は。 メイ:そんなにひどいわけじゃないの。夜になると咳き込むだけ。 クアトロ:早く治ったらいいねえ。 メイ:ええ。 クアトロ:や、間違えた。「治ったらいいなあ」、だ。 メイ:そんな。 クアトロ:ふふ、照れるなよ。 メイ:・・・・。 クアトロ:実はね、今日ここに来たのにはもうひとつ訳があるんだ。 メイ:? クアトロ:これを見てくれ。
クアトロ、絵画コンクールのチラシを渡す。
メイ:「学生反戦絵画コンクール」・・。 クアトロ:聞いたことあるかい。 メイ:ええ。応募するんですか。 クアトロ:そう。去年は銅賞だった。 メイ:銅賞! クアトロ:本当に悔しかった。絶対に金を獲れたと思っていたから。 メイ:へえ。 クアトロ:今年はリベンジというわけ。 メイ:そう。 クアトロ:何、去年は何の下調べもなしに応募したが、今年はあらゆることを調べた。 確実に獲れる自信があるんだ。 メイ:すごいですねえ。 クアトロ:それでだ。ありきたりだがね、もし俺が金を獲ることが出来たら・・。 メイ:? クアトロ:俺と付き合わないか。 メイ:あら。 クアトロ:何かね、こう、目標があった方が頑張れるというか、そんな気がしてね。 メイ:・・・・・。 クアトロ:駄目かい。 メイ:・・・・・。 クアトロ:・・・・・。 メイ:・・・・本当に獲れるんですか。 クアトロ:もちろん。獲ってやる! メイ:約束ですよ。 クアトロ:よし、燃えてきた!
ふたり、笑い合う。
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