第三場
カンナヅキ、ムツキ、キサラギ、ヤヨイ、登場(帰宅中)。
ヤヨイ:ちょっと、無理があったわね。 キサラギ:メイも気がついちゃったかもね。 ムツキ:丁度いいよ。オーガスト、なかなか接近できなかったみたいだから。 カンナヅキ:随分永いこと想っていらっしゃったのにね。 キサラギ:どのくらい前からなの。 ムツキ:ええと、マンスリーって女の子覚えてる? キサラギ:オーガストの前の恋人でしょう。 ムツキ:その娘に振られた・・ カンナヅキ:一時間後。 キサラギ:・・・・・。 ヤヨイ:最低。 キサラギ:待って。でも、それって半年くらい前のことでしょう。 確かに永いわよ。 ヤヨイ:男ってね、振られた後、やたらと永い間引きずるのよ。 キサラギ:どういうこと? ヤヨイ:寂しいだけよ。 キサラギ:そうかしら。 ヤヨイ:そうよ。 キサラギ:・・・だとしたら、最低だわ、オーガスト。 ムツキ:おい、何勝手に決め付けているんだ。 俺はあいつがメイに惚れてから、ずっとあいつを見てきたけど、 ありゃ本気だよ。 カンナヅキ:うん。目を離したら、すぐにメイへの愛を歌っている。 ヤヨイ:気持ち悪い。 ムツキ:おい! カンナヅキ:やめとけ、女ってのは勝手なものなんだ。 好きな男のすることは何でも美しく見えるってのに、 嫌いな男のすることは、それがどんなに美しいものでも、醜く見えちまう。 ムツキ:それ、オーガストの台詞じゃねえか。 カンナヅキ:ばれた。 ムツキ:口だけはうまいのよ、あいつ。いけすかないわ。 キサラギ:でも、あたし、オーガストとメイって、とてもお似合いだと思うよ。 メイって何だか、お姉さんらしいところがあるじゃない。 いつも私たちの相談に乗ってくれて。 カンナヅキ:そうだなあ。 キサラギ:メイは私たちのお姉さん。 オーガストはね、そんなメイを包んであげそうな気がするのよ。 ムツキ:それ、言っていたな。『愛のベールで包んであげたい』とか。 ヤヨイ:うげぇ。 カンナヅキ:俺も、あのふたり、それほど悪くはないと思うんだけどなあ。 それよりさ、メイには好きな男とかいないのか。 キサラギ:ああ、それを忘れてたわ! ヤヨイ:そうそう。残念ながらいるのよね。王子様が。 カンナヅキ:あちゃ・・。撃沈だな。 ムツキ:いや、そうでもないぞ。忘れたか?あいつの格言。 『恋は奪うもの、愛は与えるもの。』 カンナヅキ:ああ、ありゃ名言だ。 ヤヨイ:何なのよあいつは。 ムツキ:で、誰なんだい、その王子様って。 キサラギ:言っていいのかなあ。 ヤヨイ:かまわないわよ、小学生じゃないんだから。三年生のクアトロって先輩。 ムツキ:クアトロ!学校一の美男子と言われている人じゃないか! ヤヨイ:でも決して高望みでも、儚い夢でもないのよ。 あのふたり、最近、結構お話しするようになったみたいだし。 キサラギ:そうなのよねえ。もしかしたら行けるかもしれないのよ。 ムツキ:相手がクアトロじゃあ・・・ カンナヅキ:希望は持てないかもなあ・・。 ヤヨイ:ざまあみろだわ。 カンナヅキ:なんでお前が勝ち誇る? キサラギ:クアトロ先輩が嫌な人だったら進んでオーガストを応援するんだけど・・。 クアトロ先輩ったら、顔が良い上に中身も良いのよねえ。 ムツキ:んん、絶望的だ。 カンナヅキ:オーガスト様の方は、顔はいまいち、心は歪んでいると来ている。 ヤヨイ:歪んでいるどころか腐りきっているわ。 カンナヅキ:あんた・・。 キサラギ:複雑ね。オーガストの恋も応援してあげたいし、 メイの恋も応援してあげたい。 ヤヨイ:なんであいつの応援なんかする必要があるの。 あんな奴、宇宙に放り出されて窒息死すればいいのよ。 ムツキ:おい、今のは聞き捨てならないぜ! カンナヅキ:うん。今のはひどかった。 ヤヨイ:文句あるの?もっと言ってあげようか? キサラギ:よしてよ。ヤヨイも落ち着いたら。 ヤヨイ:あたしは落ち着いてるわ。 ムツキ:何か、あいつに恨みでもあるのか。 カンナヅキ:うん、尋常じゃないもんな。嫌い方が。 ヤヨイ:別に。あいつの存在が気に食わないのよ。遺伝子的に嫌なの! キサラギ:うふふ、ヤヨイったらね、昔、オーガストに泣かされたことがあるのよ。 小学生の頃にね・・ ヤヨイ:ちょっと!あんた何話しているの! キサラギ:いいじゃない。小さい頃の楽しい思い出よ。 ヤヨイ:よくない!楽しくもない! ムツキ:おいおい。 カンナヅキ:とても面白そうな話じゃないか。 ヤヨイ:女の過去を詮索する男って最低よ! キサラギ:[ムツキ&カンナヅキに]また今度、この子がいない時にね。 ヤヨイ:あんた、それでも友だち?絶交だわ。
ヤヨイ、怒って先に退場。 一同、笑いながら続いて退場。
|
|