第六場 オーガストの部屋
オーガスト、キャンバスを抱えながら登場。
オーガスト:自分に高慢な部分があるのは認めるがねえ、 ・・・って、おっと、そういうことについて反駁するのは僕の趣味ではない。 改めるべき点はただ黙って改める。 そう、それでこそ僕だ。
オーガスト、キャンバスを目の前に立て、椅子に坐り、向かい合う。
オーガスト:さて、何を描こう。 ・・・はて、テーマは何だったか。
オーガスト、ポケットからコンクールのチラシを取り出す。
オーガスト:・・・・反戦画か。 と、言われてもな。僕は戦争なんか行ったこともないし、 見たこともない。 無理のあるテーマだね・・。
だがクアトロには負けたくない。 何が何でも金賞を獲らなくては・・。 ・・・・・。 何を描こう。
第七場 メイの自宅。
メイ、病院から帰宅。
メイ:ただいま。
メイの従姉マリー、息子のトト(二歳)と手を繋いで登場。
マリー:メイ! メイ:マリー!トト!来ていたの。 マリー:トトがメイに会いたいって聞かないのよ。 メイ:本当?だけど一度もお見舞いに来てくれなかったじゃない。 マリー:この子も熱出してたのよ。 あなたのお見舞いにいけなくて毎日泣いていたのよ。 メイ:まあ。 [トトを見て]でも、それにしては今日はなんだか不機嫌そうね。 トト:[突然泣き出してマリーの後ろに隠れる]。 マリー:この子ったらね、 今日あなたのために保育園でお花をたくさん摘んできたらしいんだけど、 来る途中に転んじゃって、 全部川の中に落としちゃったのよ。 メイ:あら。 マリー:そう。それでこの調子。 メイ:馬鹿ねえ。 [トトに]ねえ、何泣いてるのよ。 トト:ヒック。 メイ:馬鹿な子ねえ。 あたしはあんたが来てくれるだけで十分嬉しいんだから。 トト:ヒック。 メイ:あんたが笑ってくれたらもっと嬉しいんだけど! トト:ヒック。 メイ:泣いてるあんたも可愛いけどね。 でも笑顔の方が素敵よ。 ほら、笑うの! トト:えーん。 マリー:[トトに]あんた男でしょう。 お母さん、めそめそした男は嫌いよ。 メイ:ああ、マリー、そんなこと言わないで! 男の子が泣いちゃいけないなんて決まりはないわ。 マリー:でもねえ。 メイ:[トトを抱き上げて]おいで! 来てくれたお礼にピアノ弾いてあげる。 トト:ピアノ・・。 メイ:そう!あんたが好きな曲を何でも弾いてあげるわ。
メイの母親、登場。
メイの母親:あら、マリー、来ていたの。 マリー:あ、おばさん。また勝手にお邪魔しています。 メイの母親:いいのよ。 [トトに]おや、トトも来ていたの! [一杯になった買い物袋を上にあげて]ほら、見て! 今日はご馳走よ。メイの退院を祝ってね。 マリー:わあ、嬉しい。 メイの母親:メイも、あと一週間はゆっくり様子を見て休まなくてはいけないけど、 そのあとまた思いっきり頑張ってもらうんだからね。 メイ:そうね・・。 メイの母親:今夜はあたし、腕を振るうわよ。かわいい娘のためにね! マリー:あはは。楽しみ!ねえ、メイ。 メイ:ええ。 [トトに]さ、行きましょ。
メイ、トト、退場。
[第四幕へ]
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