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作品名:オーガストとメイ 作者:ハンス

第10回   第三幕  第三場
第三場 教師Aの部屋。


 教師A、オーガスト登場


教師A:君にはね、前々から言っておきたいことがあったのだ。
オーガスト:ほう。
教師A:君は大人を馬鹿にしているね。
オーガスト:ふむ。
教師A:惚けたって無駄だよ。
    君は自分の口が上手なことを良いことに、
    我々大人をかき回して遊んでいるのだ。
オーガスト:なるほど。
教師A:そういう態度はやめなさい。
オーガスト:わかりました。
教師A:やけに素直だな。
オーガスト:そうして欲しいのでしょう。
教師A:む。わかったぞ、君の狙いが。
オーガスト:素晴らしい。もう行っていいですか。
教師A:それが君の狙いなのだ。
オーガスト:何のことですか。
教師A:思ってもいないのに適当に返事をして、
    さっさとこの場を去るつもりなのだ。
オーガスト:そんなことはありません。
教師A:そうだろう!
オーガスト:そうです。ごめんなさい。
教師A:嘘だ!本当はそんなこと全く思っちゃいないんだ!
    正直に言いたまえ!
オーガスト:嘘です。
教師A:もう!人を馬鹿にするのはいい加減にしなさい!
オーガスト:わかりました。
教師A:本当にそう思っているのか?
オーガスト:ええ。
教師A:思っていないのだろ。
オーガスト:はい。
教師A:言っていることをころころ変えるな!
オーガスト:わかりました。
教師A:ああ、こいつめ!人をこけにしておる!


 担任教師、登場。


担任教師:どうしたんですか、大声を上げて。
教師A:先生!この子は完全に大人を馬鹿にしています!
    あなたの教育にも問題があるんじゃないのですか。
    びしっと言ってやってください。
オーガスト:やれやれ・・。
担任教師:・・・オーガスト君。
オーガスト:・・・はい。
担任教師:君は大人を馬鹿にしているのか。
オーガスト:していません。
教師A:嘘だっ!
担任教師:じゃあ、どうしてこの人はこんなに怒っているんだ。
オーガスト:さあ。
教師A:[オーガストに]君が人を馬鹿にしとるからだ!
担任教師:[教師Aに]馬鹿にしていないと言っていますよ。
教師A:そんな嘘に騙されないで。
    さっきまで散々人をこけにしていたんだ。
担任教師:[オーガストに]そうなのか。
オーガスト:いいえ。
教師A:[オーガストに]嘘を言うな!
    ころころ意見を変えて私を馬鹿にしていたではないか!
オーガスト:[教師Aに]すいません。
教師A:ほら、認めた!
担任教師:[オーガストに]そうなのか。
オーガスト:いいえ。
教師A:ああ!頭が痛くなってくる!
担任教師:オーガスト・・
オーガスト:・・もう勘弁して下さいよ。
教師A:本音を出したな!それがお前の・・
担任教師:[教師Aに向かって]A先生!少し静かにしていてくれませんか。
教師A:な・・。
担任教師:[オーガストに]オーガスト、
     君はやはり人を馬鹿にしているよ。
オーガスト:・・・・。
担任教師:しかし、人を馬鹿にするという技術は、
     人を馬鹿にすることが出来るほどの頭脳の持ち主しか持ちえない。

     君の頭脳は認めよう。
     君は授業にはほとんど出ていないし、成績もひどいが、
     進級のテストは必ず学年トップだ。
     
     確かに君は他の子たちよりも優れた頭脳を持っている。
     でもね、いいかい、君がそれを自覚しているのなら、
     君は普通の人たちに対して、寛容でなくてはいけないよ。
     
     彼らを馬鹿にするんじゃなくて、彼らの力になってやるべきだ。
教師A:そう、先生の言うとおりだ。わかるかね。
オーガスト:・・・そうですね。
担任教師:本当にそう思っているのか。
オーガスト:ええ。
担任教師:それなら行きなさい。私は君を信じるよ。
オーガスト:・・・・。
 
 オーガスト、退場。

教師A:本当にわかったんでしょうかね!
担任教師:さあ、どうでしょう。
教師A:行かせていいのですか?
    あいつ、早く帰りたいから適当なことを言っただけのように思えるのですが。
担任教師:生徒を信じることのできない人間に、教師の資格はありません。
教師A:や、やあ、もっともです。


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