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作品名:オーガストとメイ 作者:ハンス

第1回   1
登場人物>

オーガスト:メイに恋をする十四歳の少年。
メイ:喘息を患う十四歳の少女。

[オーガストの男友達]
カンナヅキ
ムツキ

[メイの女友達]
キサラギ
ヤヨイ



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第一幕>

第一場  学校の屋上

 オーガスト、登場。

オーガスト:ああ、今日という日が終わる。

      時間よ、僕はあなたを呪う!
      あなたは人が幸福なときには流れを早めるが、
      人が不幸なときには流れを緩める。

      今を無駄に過ごす人にはあなたはあまりに永く、
      今を大切に生きる人にはあまりに短い。

      ねえ、君!

      今日一日、眠りについていた僕を、
      どうか今を無駄に過ごす愚かな人間たちと一緒にはしないでくれたまえ。

      僕は何をしたらいいのかがわからないだけ。
      いくら考えてもわからないから眠っていただけ。

      あなたは一日を無駄にも有意義にも過ごすことのできない人間からも、
      今日という日を奪っていこうというのか。

      それなら、愛しい友よ、せめて僕に示してくれたまえ!
      どうすれば有意義にあなたと歩むことができるのかを。

 ムツキ、カンナヅキ登場。

ムツキ:お、やってらっしゃる。
カンナヅキ:さすが、恋をする人間は詩人にだってなれるや。
オーガスト:おい、誰が恋をする人間だって。
ムツキ:誰だろう。
カンナヅキ:誰だろう。
オーガスト:ええい。
ムツキ:まだ振り向いてもらえないのか。
オーガスト:誰に。
カンナヅキ:おとぼけ作戦。
オーガスト:忌まわしい連中・・。
ムツキ:どうなのさ。
カンナヅキ:アタックしたのかい。
オーガスト:・・・別に振り向いてもらいたくないもの。
カンナヅキ:まだ言ってやがる。
オーガスト:えい、放っておいてくれないか。
      僕が欲しいのは彼女の心じゃない。彼女が幸福であることさ。
カンナヅキ:告白する勇気がないだけだ。
オーガスト:ああ、そんなものが勇気だというのなら、世界など滅んでしまえ!
ムツキ:はて、勇気とは?
オーガスト:勇気とは、敵の恐ろしさを知りながら、
      なおもそれに臆することなく立ち向かっていく心のこと。
      決して女を手に入れるために小賢しい計算を立てることではない。
ムツキ:屁理屈がお上手。
オーガスト:何とでも言うがいい。
カンナヅキ:もう何も言わないよ。実はそれほど興味もないし。
オーガスト:それはそれでつまらないのだよ。
ムツキ:要するに俺達に構って欲しいだけなのさ。
オーガスト:ふん。

 キサラギ、ヤヨイ、登場。

オーガスト:やあ、美女軍団。
キサラギ:ふざけてる場合じゃないのよう。
オーガスト:ふざけているものか。僕が軽い気持ちで君達を美女と呼んだとでも思うのかい。
ムツキ:死んでしまえ。
ヤヨイ:[キサラギに]こいつは放っておこうよ。ねえねえ、大変なんだってば。
カンナヅキ:何が。
ヤヨイ:メイが・・
オーガスト:メイが!
キサラギ:メイが病院へ入院しちゃったのよう。
オーガスト:何だって!
ムツキ:本当なのか。
キサラギ:ええ。メイったら、ここのところ全然学校に来ていなかったじゃない。
     だから、さっきヤヨイと一緒にメイの家に電話してみたんだけど、そしたら・・。
ヤヨイ:ぜんそくで入院しているって言うのよ。
オーガスト:ぜんそく!
ヤヨイ:ぜんそくが何か?
オーガスト:息をすることが苦痛となる恐ろしい病さ。
      憎むべき神は僕らを呼吸しなくては生きていけなように創ったくせに、
      そんな災いをこしらえた。
キサラギ:あなた喘息なの。
オーガスト:まあね。
ムツキ:なのに煙草は大好き。
ヤヨイ:ねえ、皆でお見舞いに行きましょうよ。きっと喜んでくれると思うから。
ムツキ:そうだなあ。
カンナヅキ:喜ぶかどうかはわからないけど。
キサラギ:喜ぶに決まっているじゃない。さあ、行きましょう。
     [乗り気でなさそうなオーガストに気がづいて]ねえ、オーガスト、どうしたの。
ヤヨイ:早くしないと置いていくよ。
オーガスト:うーん。
ムツキ:いいからこいよ!
オーガスト:やめろ、放し給え。
カンナヅキ:何が「給え」だ、詩人気取りめ。おら、行くぞ。
オーガスト:考えさせてくれよ!
キサラギ:何でそんなに嫌がるの。オーガスト、メイのこと、嫌いなの。
ヤヨイ:ひっどい。
オーガスト:馬鹿を言うな!嫌いなどころか愛しているんだ!
ムツキ:うひゃあ。
カンナヅキ:衝撃の告白。
キサラギ:まあ、そうだったの!びっくりしたよ。
ヤヨイ:私はそんな気がしてたけど。ねえ、いいから行こう。

 オーガストを残して退場。

オーガスト:・・・ああ、まいったね。


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